職場不適応しょくばふてきおう
最終編集日:2022/2/6
概要
職場不適応は、仕事のプレッシャーや職場の人間関係などがストレス因子となって起こる適応障害です。
心身や行動面において、抑うつ気分や不安感、不眠、頭痛、食欲不振、暴飲暴食、出勤拒否といったさまざまな症状が現れますが、ストレスから離れると少しずつ調子が元に戻ることが特徴です。
症状が長期間に及ぶ場合は、うつ病などを発症している可能性があり注意が必要です。
原因
職場不適応は、その人にとってストレスを感じる環境に適応できないことから、こころやからだが疲れてしまい現れる病態です。
ストレスには外因的ストレス、内因的ストレスがあり、その要因となり得る具体的な事例には、下記のようなものがあります。
・配置転換や転勤などで職場の環境が変化した
・上司や部下、同僚との人間関係がうまくいかない
・目標やノルマの達成など、周囲からの期待がプレッシャーとなる
・仕事の質が自分の能力にあっていない
・仕事の量が増え、キャパシティーオーバーとなっている
・休みがとれず、過労や睡眠不足などによる疲労が蓄積している
・業務に自由裁量がまったくなく、自主性が発揮できない
・パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントに苦しんでいる
症状
職場不適応には、大きく分けて精神面、行動面、身体面の症状が現れるとされています。
●精神面
抑うつ気分、不安感、焦り、怒り、緊張感、判断力や思考力の低下、など
●行動面
積極的に行動できない、暴飲暴食、飲酒量が増える、暴言を吐いたり暴力的な行動をとったりする、遅刻が増える、無断欠席や欠勤が増える、電話に出られない、メールを返せない、など
●身体面
不眠、頭痛、動悸、発汗、めまい、手のふるえ、食欲不振、倦怠感、吐き気、など
検査・診断
適応障害には明確なストレス要因があるとされています。
きっかけとなるストレスの始まりから3カ月以内に症状が現れていること、また抑うつ気分や不安感、自律神経の乱れによるさまざまな症状が生じていること、それらのことにより仕事や生活に支障が出ていること、などをもとに診断されます。
診断基準には、DSM-5(アメリカ精神医学会による診断基準)やICD-11(WHOによる診断基準)が用いられます。
なお、脳腫瘍や、身体症状から考えられる別の疾病の可能性がないことを先に診断・確認してもらうことも大切です。
治療
職場不適応は、ストレスとなっている要因を軽減したり排除したりすることで改善されます。
具体的にはしっかりと休養をとり、職場の環境を調整することが基本となります。転職や休職も考えられますが、仕事をつづける場合、例えば異動や休職などの申し出がすぐに対応してもらえるとは限りません。職場の理解がとても重要となります。
また、カウンセリングや認知行動療法を行うことも有効とされています。
抑うつ気分や不眠などの症状がある場合は、対症療法として薬物療法(薬による治療)が用いられます。
セルフケア
療養中
ストレスの要因から離れることで、しだい症状は改善していきますが、まずはしっかりと休息をとり、ストレスのない過ごし方をすることが大切です。
過労などにより体力が落ちている場合もありますので、バランスのよい食事や適度な運動も有効です。症状が落ち着いてきたら徐々に生活リズムを整え、仕事の再開や職場復帰をイメージすることを心がけましょう。
監修
赤坂溜池クリニック院長
降矢英成
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