失語症しつごしょう
最終編集日:2023/1/12
概要
脳卒中や外傷などによって大脳の言語にかかわる部位が損傷し、話す、聞く、読む、書くという4つの言語機能が障害された状態を「失語症」と呼びます。言語中枢(言語野)は9割以上の人で左大脳半球にあります。4つの言語機能の中枢は異なる部位にあるため、損傷を受けた場所によって、現れる症状も異なります。
「高次脳機能障害」の一症状に分類され、記憶障害や失認(物や人を識別できない)、失行(日常生活での動作がうまくできない)などの症状を伴うこともあります。
原因
脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、脳炎などの脳の病気や、事故による頭部外傷が原因になることがほとんどです。
症状
脳の損傷部位によって4つに分類され、損傷された部位の名前がつけられています。
●ウェルニッケ失語(感覚性失語)……話すことはできますが、相手の言葉を聞いて理解することができません。また、自分が話す内容も十分に理解できていないことも多く、言い間違いや、まったく言葉として成り立っていない意味をなさない音の羅列を流ちょうに話すこともあります。
●ブローカ失語(運動性失語)……相手の話すことはおおよそ理解できますが、話すことがむずかしく、言葉が出てこない、流ちょうに話せないなどが現れます。
●伝導失語……ウェルニッケ中枢とブローカ中枢の連絡が遮断されて起こります。相手の話すことは理解できますが、話すときに単語の1音だけ間違えたり、相手の言うことを復唱することができなくなったりします。
●全失語……話すことができず、相手の話すことを理解することもできません。
検査・診断
問診、脳や脳神経にかかわる病気やけがの既往の確認で診断がつけられます。失語の機能を含めた脳神経全体の機能障害(高次脳機能障害)をさらにくわしくみるために神経心理検査を行い、脳のどの部分の機能が損傷しているか、CT検査やMRI検査で調べます。発声機能に問題がある構音障害との鑑別診断も必要であり、ストレスなどの心因によって話せなくなる状態は「失声症」といわれます。
治療
脳炎や脳腫瘍など、脳の病気が原因の場合は、その治療を行います。治療によって脳圧が下がるなどで言語分野への影響が軽減されれば、失語症は改善されることがあります。
失語症の治療は言聴覚士の指導のもとにリハビリテーションが行われます。個別訓練や集団訓練などさまざまな形をとりながら、CI言語療法(短期集中的に発話を促す)、MIT(音楽的な要素を取り入れて発話を流ちょうにさせる)、PACE(効果的な意思伝達のためのスキルを身につける)などがくり返されます。言語だけでなく、身振り手振りや絵など、ほかの方法を使ってコミュニケーションスキルを向上させる試みも行われます。
セルフケア
療養中
●周囲の対応
患者さんの失語症について、できることとできないこと、患者さん本人にもコントロール不可能な症状であることなどを正しく理解することが大切です。正しい言葉を発したり理解したりすることよりも、コミュニケーションをスムーズにとれることを改善の目標にするといいでしょう。焦らずに患者さんを見守ることが第一です。
監修
赤坂溜池クリニック 院長
降矢英成
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