強迫性障害

きょうはくせいしょうがい

最終編集日:2023/6/29

概要

外出時の施錠が気になる、ガスの火が気になるなどで一度や二度、家に引き返したことのある人は多いでしょう。強迫性障害は、このような心配や不安が過剰になり、何度も確認しに帰る、最終的に外出をやめてしまうなど、生活に支障をきたす病態を指します。

発症率は1~2%で、30代くらいまでの比較的若い世代に多く、平均発症年齢は19.5歳という報告もあります。男女比はほとんどなく、女性のほうが若干多いとされています。

原因

原因はまだ明らかになっていません。脳内の神経伝達物質であるセロトニンの機能低下や、セロトニンに関連する神経回路の異常、遺伝的な要因などが関与すると考えられています。

症状

「強迫観念」と「強迫行為」が現れます。強迫観念は「ガスの火を消したか」「電車のつり革に触ったので何かに感染するのでは」「運転中に知らないうちに事故を起こしたのではないか」「チケットに4や9の数字が入っていたので不幸が起こるのでは」など、いろいろな心配、不安、恐怖に見舞われます。その不安から逃れようと、例えば、何度も家に帰って火元を点検する、外出時には何にも触れない、帰宅後に何度も手を洗う、車から降りて周囲を確認する、通った道を見に戻るなど、同じ行為をくり返すのが強迫行為です。また、周囲の人に確認に行ってもらう、何度も「大丈夫」と保証してもらうなどの「巻き込み行為」がみられることもあります。


●強迫観念・強迫行為の例……汚染や感染の心配、火事や事故、盗難被害などの心配、自分の攻撃性についての心配、数字についてのこだわり、物を左右対称や1列に並べるなどのこだわり、家事や仕事などを順番どおりに進めることへのこだわり、清潔への強いこだわり、長時間あるいは頻回な入浴や手洗い、計算ミスや記入ミスなどの過剰な確認など

検査・診断

国際的な診断基準としては、①強迫観念と強迫行為が存在する、②強迫観念や強迫行為によって1日1時間以上を浪費し、生活に支障をきたしている、の2つを満たすものとされています。さらに具体的には、①強迫観念と強迫行為が過剰にくり返される、②患者さん自身が不合理で非論理的でばかばかしいとわかっていても、考えをやめられない・行為をやめることができない、③強迫観念や強迫行為に苦痛を感じる、④生活に支障をきたしている、⑤ほかの疾患(うつ病、自閉スペクトラム症、統合失調症など)が否定されるなどに該当する場合に、強迫性障害と診断がつけられます。また、Y-BOCS(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale:エール・ブラウン強迫尺度)日本語版を用いて、症状の評価が行われます。Y-BOCSは治療の効果をみるためにも用いられます。

強迫性障害の30~50%にうつ病が併発するといわれ、児童や思春期の発症では、チック症や自閉スペクトラム症に関係する場合があるため、診断は慎重に行われます。

治療

まず心理教育で、病気への理解、治療への動機づけを行います。患者さん自身は「強迫観念、強迫行為は不合理である」と気づいているため、症状が起こるしくみを説明するとともに、強迫観念による不安を強迫行為で軽減していると症状が進行し、悪循環に陥ることを理解してもらいます。そのうえで、薬物療法と認知行動療法(CBT)が行われます。


●薬物療法

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬です。通常、高用量の投与を2~3カ月つづけて効果をみます。この期間で症状が改善されるケースも少なくありません。効果がみられない場合には、薬を変更したり、抗精神病薬を併用したりします。なお、子どもに対する治療は、認知行動療法が優先されます。


●認知行動療法

認知行動療法で有効と考えられているのが「曝露反応妨害法」です。例えば、患者さんが汚いと感じるドアノブにあえて触らせて(曝露)、その後の強迫行為(手を洗うなど)をさせない(妨害)ようにします。時間が経てば強迫行為をしなくても不安感が軽くなっていくことを体験させ、それをくり返して強迫行為、さらには強迫観念から遠ざけるものです。

セルフケア

療養中

●周囲の対応

強迫性障害の治療では、家族や周囲の人も病気について理解し、必要に応じて家族もカウンセリングを受けて協力するようにします。患者さんが巻き込み行為をみせる場合、それに応じないようにして「大丈夫」という保証も与えないようにします。これは、保証をつづけていると患者さんが保証なしには過ごせなくなってしまうからです。保証の代わりに、認知行動療法などがうまく行えたら、褒めて認めてあげるようにしましょう。

強迫性障害は再発のリスクがあり、また、治療の経過中にうつ病を併発することもあります。焦らずに治療をつづけるようにサポートし、寛解を得てからも変化がみられたら、早めの受診を促してあげましょう。

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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