拒食症(神経性無食欲症)きょしょくしょう・しんけいせいむしょくよくしょう
最終編集日:2023/1/10
概要
拒食症は摂食障害のひとつで、神経性無食欲症、神経性食思不振症とも呼ばれます。近年、食欲はあること、過食の時期もあることから「神経性やせ症」への病名変更が提唱されています。
食べることを拒否する病気で、体重の減少や極端なやせ、栄養の偏りが起きても認めず、病気であるという認識もありません。背後には心理的・社会的・文化的要因などがあると考えられています。12~25歳に好発し、患者さんの90%以上が女性、アスリートなど、厳しい体重管理のある職業や環境で発症リスクが高くなるとされています。
原因
拒食症が起こる生物学的なしくみはまだわかっていません。以下のような要因が絡み合って発症を促すと考えられています。
●心理的要因……傷つきやすい、自己評価が低い、人の評価が過度に気になる、強迫的な考えに陥りやすい、ストレスを上手に発散できない、完璧主義、孤独感や疎外感を抱きやすい、などの性質の人がリスクが高いと考えられています。また、いじめや挫折、転居や両親の離婚などの環境の変化を経験したことなども誘因となります。
●社会的・文化的要因……やせ=美しいといった風潮や、肥満を忌避する傾向、あふれるダイエット情報などが「(食べることを拒否して)やせてきれいになりたい」という誤った思考に影響していると考えられます。
症状
拒食と過食をくり返す、食べたものを無理に吐くという食行動の異常がみられます。やせることへの願望が強く、極端にやせていても「まだ太っている」と訴え、過度な運動をしたり下剤を使ったりします。周囲が食行動の異常や、やせを指摘しても認めず、病気だとは考えません。患者さん自身でも気持ちをコントロールすることがすでにむずかしい状態になっていて、異常な行動をやめることができません。
その結果、低血圧、低体温、無月経、むくみ、便秘、肌の乾燥、貧血、疲れやすさ、体毛が濃くなる、などが起きてきます。嘔吐や下痢をくり返すことで低カリウム血症や低ナトリウム血症などの電解質異常が起こり、さらに時間が経過すると、筋肉の減少、骨粗鬆症、肝臓や腎臓の障害など、さまざまな障害が現れます。また不安感、やせへの執着、うつ、無気力、集中力の低下など、精神的な症状も伴います。
検査・診断
問診を行い、①BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が17.5以下、②食べたものを自分で嘔吐する、下剤を使う、過度の運動の実践、利尿剤や食欲抑制剤の使用が1つ以上あるか、③太ることへの恐怖心があるか、などを目安に診断がつけられます。
治療
食行動の改善を進めて、全身を健康な状態に戻していきます。適切な栄養を摂取して体重が増えてくれば、低体温や無月経、むくみ、便秘など、症状の多くは徐々に回復します。標準体重の60%以下になっていると日常生活動作が厳しくなるため、入院加療がすすめられることもあります。同時に、カウンセリングを行い、拒食症の原因となった心の状態を改善していきます。
セルフケア
療養中
●周囲の対応
患者さん本人は病気であるという認識がないこともあり、積極的な受診を望めないケースも珍しくありません。また一般的に治療には時間がかかり、再燃をくり返すなど、スムーズには進まないこともあります。家族など周囲の人は拒食症という病気をしっかり理解して、本人の治そう・治りたいという気持ちに寄り添い、治療に取り組める環境づくりを進めるなどで、サポートしていきましょう。
監修
赤坂溜池クリニック 院長
降矢英成
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