過換気症候群
かかんきしょうこうぐん

最終編集日:2022/3/30

概要

精神的ストレスなどを引き金として、急に息苦しくなったり呼吸回数が多くなったりといった過換気発作を起こす疾病です。

発症すると不安が募り、自分の意思ではコントロールできず、手足のしびれや筋肉のけいれんをきたすことがあります。

パニックになって呼吸が浅く速くなりますが、ゆっくり腹式呼吸をすると落ち着いていきます。発作自体は命にかかわるものではなく、通常は30分から1時間程度で治まることが多いとされています。


原因

ふだん、呼吸の調整は無意識のうちに脳の神経(呼吸中枢)によって行われています。しかし、強い精神的ストレスなどから激しく呼吸をする過呼吸の状態になると、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れてしまうことがあります。それにより血液中の二酸化炭素濃度が低下し、呼吸が抑制され、からだにさまざまな症状が現れます。

不安症の傾向がある人に起きやすいとされ、男性よりも女性、とくに若い女性に多いといわれています。不安や緊張などの精神的要因のほか、発熱などの身体的要因、激しい運動や疲労、睡眠不足などがきっかけになることがあります。


症状

過換気発作を発症すると、いくら息を吸っても空気が肺に入っていかないような息苦しさを覚え、さらに不安が生じ、呼吸回数が増加するという悪循環が起こります。

症状としては、呼吸困難、めまい、胸の痛み、動悸、頻脈、血圧上昇などが出現する場合があります。また、体内の血液がアルカリ性に傾くと低カルシウム血症の症状が出るため、手足のしびれや筋肉のけいれんや硬直が起こり、手のひらをすぼめたような形(助産師の手)とともにトルーソー徴候と呼ばれる状態がみられることもあります。

耳の前やあごの関節をたたくと顔面神経が刺激され、クボステック徴候といわれる唇が上方に上がる症状がみられたりもします。

重症でない場合は、一般的に予後はよいとされています。



検査・診断

呼吸が速く、呼吸困難の自覚症状があり、筋肉のけいれんや硬直などの症状がみられる場合、過換気症候群が疑われます。既往歴、発症までの経緯、発作時の状況などの問診とあわせて診断されますが、血液検査が行われる場合もあります。

必要に応じて、肺塞栓症や気管支ぜんそく発作、上気道狭窄、冠動脈疾患、代謝性アシドーシスなど、ほかの重大な疾患が隠れていないかどうか、X線検査や心電図検査を実施することもあります。


治療

発作が出ている場合は、できるだけゆっくり呼吸をしたり、断続的に呼吸を止めたりすることで症状は改善していきます。

深く息を吸って吐く腹式呼吸も有効です。

患者さんの不安感に応じて薬による治療(抗不安薬)も行われます。

紙袋を口にあてて、一度吐いた息を吸うことで血液中の炭酸ガス濃度を上昇させるペーパーバック法が用いられていたことがありましたが、酸素不足や体内の二酸化炭素が過剰になる可能性があるため、現在は行われていません。


セルフケア

療養中

発作が生じるきっかけをつくらないために、できるだけ原因をコントロールすることが大切です。発作の原因が緊張やストレスからくるものであれば、自分なりのストレス解消法を見つけたり、深呼吸・腹式呼吸を心がけたりするなど、リラクセーションも効果があるといわれています。

日頃の体調管理にも気をつけ、不安が強い場合などはカウンセリングを受けることもよいでしょう。

また、パニック症、不安症、うつ病などの精神疾患がある場合は、それらの治療を行うことが過換気症候群の発症防止につながることがあります。


監修

赤坂溜池クリニック  院長

降矢英成

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