脳腫瘍のうしゅよう
最終編集日:2021/12/21
概要
頭蓋骨のなかにできる腫瘍の総称が脳腫瘍です。頭蓋内には大脳、小脳、脳幹などの脳実質、下垂体、くも膜や硬膜などの髄膜、脳血管や血液、顔面神経や聴神経などの脳神経など、さまざまな組織がありますが、それらのどこに腫瘍が発生するかによって治療方法が異なります。
脳腫瘍は、脳を包む膜から発生する原発性脳腫瘍と、肺がんや乳がんなどほかの部位からの転移による転移性脳腫瘍に大別できます。
原発性脳腫瘍には増殖速度が遅く正常組織との境界がはっきりしている良性腫瘍と、増殖速度が速く正常組織に浸潤(しみ込むように広がる)して境界がはっきりしない悪性腫瘍があります。
原発性脳腫瘍には発生する組織によって神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫などがあります。
日本では年間約2万人が発症するといわれています。
原因
遺伝子の変異、ストレス、環境などが要因となって発症すると考えられていますが、はっきりとした原因は明らかになっていません。
高脂肪食品のとりすぎや食物繊維不足といった栄養バランスの乱れや、肥満、喫煙は脳腫瘍の進行を早めると考えられています。
症状
腫瘍の種類にもよりますが、腫瘍の周囲の脳がむくむことがあります。この状態を脳浮腫といいます。腫瘍や脳浮腫によって頭蓋のなかの圧力が高くなると、頭痛、嘔吐、視力障害、意識障害がおこります。
頭蓋内の圧力は一定ではなく、睡眠中にやや高くなるため、起きがけに頭痛がひどかったり吐き気があったりします。これらは、脳腫瘍が原因の頭痛の特徴といわれています。
また腫瘍に圧迫されて髄液の流れが悪くなると、脳のなかの空洞が拡大する水頭症を起こすことがあり、この場合には緊急性が高くなります。
さらに脳の各部位の機能に障害をもたらす局所症状が出ることもあります。例えば、小脳に障害が起きると歩行障害やふらつき、聴神経に腫瘍が発生すると片側の難聴やめまいなどの症状が現れます。
検査・診断
問診の後、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査で、腫瘍の有無、位置、大きさ、状態を調べます。そのほかに必要に応じて脳血管造影検査、シンチグラフィ検査、腫瘍マーカーの検査など行い、腫瘍の種類や病期を鑑別して、診断します。
脳波や内分泌検査を行うケースもあります。
治療
手術療法を中心に、放射線療法、化学療法を組み合わせて治療を行います。
良性腫瘍の場合は外科による手術療法で完治が期待できます。手術がむずかしい部位に腫瘍があり完全に切除できなかった場合は、手術後に放射線療法を行います。腫瘍の進行が遅い場合は経過観察を行うケースもあります。
悪性腫瘍では、腫瘍の種類や発生場所、浸潤の度合いなどに応じて、手術療法、抗がん剤による化学療法、放射線療法を組み合わせた治療が行われます。最近では治療が困難であった悪性脳腫瘍に対して「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」と呼ばれる治療法も開発されつつあります。
セルフケア
病後
脳腫瘍では、脳内の治療を行うため術後に運動や言語、認知などの機能に障害が残る可能性があります。必要に応じてリハビリが行われますが、からだだけでなくこころのケアが必要になることもあります。
術後の機能障害やこころの変化に気づいたときには、すぐに担当の医師に相談することが大切です。
予防
片方の手足や顔半分の麻痺・しびれ、ろれつが回らない、言葉が出ない、人の話が理解できない、視野が欠ける、てんかんを起こす、朝起きたときに頭痛がする、などの症状があったらすぐに病院へ行きましょう。
これらは脳梗塞や脳出血にもみられる症状ですが、徐々にこのような症状が出てくるのが脳腫瘍の特徴です。
監修
寺下医学事務所医学博士
寺下謙三
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