せん妄状態

せんもうじょうたい

最終編集日:2022/3/10

概要

せん妄とは、突然に現れる精神の混乱状態のことをいいます。薬の服用や脱水、感染症、長期的な睡眠不足など、からだに何らかの負担がかかることがきっかけとなり、時間や場所、人を認識する見当識に障害がみられたり、意識がもうろうとして錯覚や幻覚にとらわれたり、怒りっぽくなったりするなどの症状が現れます。

せん妄は一時的な症状で、どの年代にも起こり得る病態ですが、高齢者にとくに多くみられ、認知症との鑑別が必要になります。


原因

せん妄が起こる原因には、薬剤や病気、環境などさまざまです。

●せん妄を起こしやすい薬剤

オピオイド系の鎮痛薬、睡眠導入剤、抗精神病薬、抗うつ薬、抗コリン作用のある薬剤、抗ヒスタミン剤(H2ブロッカー)、パーキンソン病治療薬(レボドパ)、筋弛緩薬などが挙げられます。


●せん妄の原因となり得る病気

認知症、脳血管障害、熱中症などによる脱水、感染症、糖尿病、腎機能障害、甲状腺疾患、パーキンソン病、悪性腫瘍(がん)、アルコール依存症などが挙げられます。重い便秘やかぜ、睡眠不足など、体力が低下している場合にも突然発症することがあります。


●せん妄の原因となり得る環境

家のリフォームや模様替え、生活環境の変化がストレスとなってせん妄をひき起こす場合があります。また、手術によるストレスや手術で使用した医療用麻酔が要因となることもあるほか、集中治療室(ICU)など窓や面会のないような隔離された環境での入院がきっかけとなり、せん妄が現れる場合があります。そのため、以前は「ICU症候群」とも呼ばれていました。


症状

せん妄は突然発症し不安定な精神状態になりますが、多くの場合は一時的なものです。速やかに対処することで、通常は数日〜1週間ほどで軽快へと向かいます。

症状は1日のなかでも変動しやすく、夕刻や夜間に悪化する「夜間せん妄」が多いとされています。


具体的な症状としては次のようなものが挙げられます。

・注意力が低下し物事に集中できなくなり、最近のことを思い出せない

・時間や場所、自分や他人がわからなくなる見当識障害が起こる

・意図せずに歩き回ったり、支離滅裂な行動をとったりする

・急激な眠気をもよおしたり、急に目覚めたりする

・強い妄想を抱いたり幻覚におびえたりする

・人格や気分が変化し、怒りっぽくなるなど精神が不安定になる

・夜に眠らないなど、睡眠リズムに異常をきたす

・治療中に点滴やチューブを抜いてしまう


検査・診断

せん妄が疑われる場合は、症状や病歴、薬の服用状況、生活環境、年齢などとあわせ、身体診察(感染症や脱水がないかどうかなど)が行われます。また、せん妄の原因を調べるために、必要に応じて血液検査や尿検査、脳MRI検査、脳CT検査、脳波検査、心電図検査、パルスオキシメーターなどの検査が行われます。

診断基準にはDSM-5(アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)が多く用いられます。


治療

せん妄は、こころやからだに何らかの負担がかかり脳の機能が乱れることで起こる病態のため、こころやからだへの負担を取り除くことが重要です。


せん妄の原因が病気であればその治療を優先的に行い、原因が薬剤であれば服用量を調整したり中止したりすることが検討されます。

環境が原因であれば、ストレスのかからないような環境を整え、時計やカレンダーをそばに置き、昼夜のリズムがつくりやすいような状態にします。

症状の程度により多くは入院が必要となりますが、低血糖など軽度の病態であれば、短時間で回復する場合もあります。

対症療法としての薬の服用については十分な注意が必要です。


セルフケア

予防

せん妄の原因がわかっている場合は、その原因を取り除くことが大切です。

日常では昼夜の区別がつくように生活リズムを整え、バランスのよい食事や適切な水分補給、適度な運動(ウォーキングなどの有酸素運動)、十分な睡眠を心がけましょう。

また、高齢者は体調の変化に気づきにくい場合があるので、日頃から脱水などには注意が必要です。


監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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