自律神経失調症じりつしんけいしっちょうしょう
最終編集日:2022/4/1
概要
自律神経はからだを活発に働かせる交感神経と、からだを休めるときに働く副交感神経に分かれています。ストレスや過労などにより、この自律神経のバランスが崩れることで現れるさまざまな症状を総称して自律神経失調症といいます。
症状には、眠れない、疲れがとれないなどの「全身的症状」と、頭痛、動悸、下痢や便秘などの「身体的(器官的)症状」、不安やうつなどの「精神的症状」などがあります。検査では異常がみられないケースが多く、症状に個人差があるのも特徴です。
「自律神経失調症」は、医学的には正式な疾患名ではありません。検査を実施してもからだに異常がみられず、明らかな精神的疾患がないときに暫定的な診断名としてこの病名が使われる場合があります。
原因
自律神経は通常、反対の作用をもつ交感神経と副交感神経がバランスをとりながら、からだの機能を一定の状態に保っています。しかし、強いストレスや過労、ホルモンの乱れによってそのバランスが崩れると、自律神経失調症を起こす場合があります。
冷え性、睡眠不足、不規則な食生活、ホルモンの乱れ、生活環境の変化や家庭・職場の人間関係などがきっかけになると考えられています。
症状
自律神経失調症の原因が一人ひとり違うように、症状も人によってさまざまです。現れやすい症状としては次のようなものがあります。
●全身的症状
眠れない、疲れがとれない、熱っぽい、倦怠感、食欲不振、過食、など
●身体的症状
頭痛、めまい、動悸、息切れ、耳鳴り、胃痛、吐き気、下痢、便秘、手足のしびれ、肩こり、腰痛、多汗、頻尿、残尿感、冷え、じんましん、かゆみ、月経痛、など
●精神的症状
情緒不安定、イライラ、不安感、やる気が出ない、うつ、気分が落ち込む、など
こうしたいくつかの症状が一度に現れることもあります。また、冬から春にかけてなど、季節の変わり目に症状が出やすい傾向があります。
検査・診断
自律神経失調症とは、“自立神経は働いているもののバランスが乱れている”という状態のため、検査をしてもからだや神経に何かしらの病気などはみつからないのが特徴です。まずは内科や耳鼻科、婦人科、整形外科など症状にあった科を受診し、病気が隠れていないかを調べます。
病気が特定できず自律神経失調症が疑われる場合、日常生活の過ごし方や食事、仕事について、環境の変化はあったかなどの問診が行われます。過度なストレスや生活リズムの乱れ、ホルモンバランスの変化といった要因がある場合に、自律神経失調症ではないかと診断されます。
重度の自律神経失調症が疑われる場合は、心理テスト、性格テストなどが行われることがあります。
治療
自律神経のバランスの乱れは、ストレス、睡眠不足、生活のリズム・食生活の乱れ、疲労などがきっかけで起こることがあります。そのため、治療においてもストレスをコントロールし、生活習慣を改善(規則的な睡眠と食事)することが重要です。
治療法としては、身体的症状にあわせた内服薬などによる対症療法を行うことがありますが、ストレスなどによる精神面での影響が強い場合は、精神的症状にあわせた内服薬も併用することがあります。
●休養
ストレス源から距離を置き、休む時間をもつこと、がまんをしないことが大切です。気分転換に散歩をしたり、ゆっくりと入浴をしたり、適度な運動やストレッチをとり入れるなど、生活のなかでオン・オフを切り替えることがストレス解消につながることがあります。アロマテラピーや映画・音楽鑑賞、読書といったリラクセーションも効果的です。
リラックス法として腹式呼吸、自律訓練法もおすすめです。
●生活習慣の見直し
バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、過度なカフェインを避けること、習慣的な飲酒や喫煙を控えることが症状の改善につながります。十分に睡眠をとり、自律神経をリセットするために朝日を浴びることも大切です。
食生活では、ビタミンA、B、C、Eを含む食事をとることがおすすめです。カルシウムはイライラをしずめ、不眠解消の効果があります。
●薬による治療
現れている症状を抑えるために、薬による治療も行われます。症状にあわせて、痛みには鎮痛薬、不眠には睡眠薬、腹の不調には整腸薬といった薬が処方されます。漢方薬や自律神経調整薬もよく用いられますが、漢方薬は体質によって合う、合わないが分かれるため、症状や体質にあわせて医師が見きわめることが必要です。またホルモンバランスの乱れには、ホルモン剤を用いた治療が効果的な場合があります。
●精神面に対する治療
ストレスやうつ、不安の症状が強いときには、一時的に抗うつ薬や抗不安薬が処方される場合があります。
セルフケア
予防
十分な睡眠やバランスのよい食事を心がけ、規則正しい生活環境を整えましょう。またストレスをひとりで抱え込まず、周りの人に相談するなどの対処法を身につけること、リラックスできる時間をもつことも大切です。
監修
赤坂溜池クリニック 院長
降矢英成
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