双極性障害

そうきょくせいしょうがい

最終編集日:2023/6/30

概要

躁状態とうつ状態が交互に現れる病気です。「躁うつ病」とも呼ばれます。国際疾患分類(ICD-11)は、「障害」という言葉を避けるために名称を変更しました。そのため、今後、日本でも「双極症」という名称が使われるようになります。

60~70%がうつ状態で発症するため、うつ病と診断され、躁状態が現れるまで双極性障害という診断がつかないこともあります。双極性障害の発症率は1~3%で平均年齢は30歳前後といわれます。躁状態の程度によって、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害に分けられます。


●双極Ⅰ型障害……うつ状態と躁状態が現れ、躁状態では強い症状がみられ、社会的にも問題になるような行動を起こして生活に支障をきたす

●双極Ⅱ型障害……うつ状態と躁状態が現れ、軽度な躁状態(軽躁状態)がみられるが、社会的な問題行動にまでは至らない

原因

原因は現時点では不明です。遺伝的な要因、脳内の神経伝達物質の機能不全などの関与が考えられています。

症状

躁状態のときの症状(躁病エピソード)と、うつ状態のときの症状(うつ病エピソード)があります。躁状態とうつ状態の入れ替わりが周期的にあり、まれにうつ病エピソードが現れない場合もみられます。


●躁病エピソード

軽躁状態では、非常に元気な様子、積極性をみせてやる気や行動力がある、短時間の睡眠で平気など、周囲からは「いつもよりもハイな状態」にみえます。躁状態では、症状がさらに強くなります。ひっきりなしにしゃべりつづける、眠らずに動き回る、長電話や頻回のメールを送る、できない約束(契約)をする、高額な買い物をする、誇大妄想的なことを話す、怒りっぽくなり感情を爆発させることがある、など。


●うつ病エピソード

疲労感・倦怠感、すべてのことに対して興味や関心が湧かない、何をみても(体験しても)楽しくない・喜ばない、食欲亢進あるいは食欲不振、睡眠障害、集中力や思考力の低下、物事を決められない、体重減少あるいは増加、自分を無価値と感じる、罪悪感を感じる、自殺念慮(自殺を考える)、など。

検査・診断

問診のほかに、血液検査やBSDS(bipolar spectrum diagnostic scale)などの心理テストを用いますが、症状に基づいておおよその診断がつけられることが多く、以下のような診断基準に沿って行われます。


●躁状態の診断基準

気分の高揚、開放的、易怒的(興奮しやすく怒りっぽい)、活動・活力の亢進が1週間以上つづいて、さらに以下のうち3つ以上が認められる。いつもよりも①自信にあふれた様子、②眠らなくても平気、③多弁、④いろいろな考えが湧いてくる様子、⑤関心や注意があちこちに移る、⑥活発、⑦異性との交際が多い、浪費する。

鑑別が必要な疾患に、うつ病、境界性パーソナリティ障害などがあります。鑑別診断のため「光トポグラフィー検査」が行われることがあります。これは頭の外から、経皮的に脳に近赤外光という光線を照射し、脳内の血流の様子を精査するものです。とくに、うつ病との鑑別に有効とされますが、実施する医療機関は限られています。また、アルコール依存症や対人恐怖症(社交不安症)、パニック障害などを併発する場合もあるため、慎重な診断が行われます。


●うつ状態の診断基準

①抑うつ気分、②興味・関心の低下、③不眠あるいは過眠、④食欲亢進あるいは不振、⑤疲労感、⑥自己否定感・自責感、⑦集中力の低下、⑧動作緩慢、⑨自殺念慮のうち、①と②のいずれか、あるいはどちらもがあって、そのほかに3つ以上があてはまる状態が、1日中、ほぼ毎日、2週間以上続いている。

治療

薬物療法と心理療法が行われます。


●薬物療法

気分安定薬と、非定型抗精神病薬が用いられます。基本となるのがリチウムを主成分とする気分安定薬で、躁状態・うつ状態のどちらも改善します。ただし、副作用が起こりやすいため、医師の管理のもとで適切に服用する必要があります。

うつ状態の改善に抗うつ薬を用いると、躁状態を亢進させるリスクがあるため、使用は避けられます。また、再発予防の目的でも気分安定薬と、非定型抗精神病薬が処方されます。


●心理療法

まず病気について理解し、自分の状態を受け入れて、治療内容を把握・理解して治療に前向きに取り組むことができるように「心理教育」を行います。とくに躁状態にある場合は、自身の病気についての自覚がなく、治療開始まで困難を伴うことがあります。

そのうえで、認知行動療法や「対人関係・社会リズム療法(IPSRT)」などが行われます。IPSRTは、患者さんの対人関係に焦点をあてたテーマと、患者さんの1日の行動の時刻をチェックして生活リズム・社会リズムを見直すというテーマで面談を行うもので、双極性障害の改善や再発予防に効果があるとされています。そのほか、家族や周囲の協力が不可欠なため、周囲の人を含めたカウンセリングも行われます。

セルフケア

療養中

●緊急対応を考えるとき

双極性障害では、強い症状がみられる場合、緊急対応が必要になることがあります。次のような状態になったら、すぐに医療機関を受診し、入院治療を検討しましょう。

〈躁状態〉……興奮状態がつづき、行動をコントロールできない、対人関係のトラブルを起こす、浪費や計画性のない契約などで本人や家族、周囲に重大な損失を招くなどの可能性がある

〈うつ状態〉……悲観的な考えや絶望感が強く自殺念慮がみられる、あるいは自殺を図った


●治療のゴール・予後

双極性障害は再発しやすい病気です。躁状態、うつ状態のどちらも治まっていても、服薬を中断すると再発する場合が少なくありません。症状に悩むだけでなく、社会生活を台なしにしてしまう可能性もあります。症状がないのに薬を飲みつづけることに疑問を抱いたり、嫌気がさしたりするでしょうが「適切な服薬で症状をコントロールする」ことを治療のゴールと考えて継続してください。

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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