恐怖症
きょうふしょう

最終編集日:2022/3/10

概要

恐怖症は、特定のものや状況、環境に対して強い恐怖や不安を感じてしまう疾病です。限局性恐怖症、特異的恐怖症、個別的恐怖症とも呼ばれる不安障害のひとつで、幼少期や遅くとも成人期初期に発症する場合が多く、非常によくみられる病気です。

対象は高所や閉所、昆虫、雷雨、血液、注射などがあり、過度に恐怖が生じてしまうと日常生活に支障をきたし、ときにパニック障害を起こすこともあります。


原因

遺伝的要因、体質的要因のほか、親の過保護、身体的虐待、性的虐待などの環境要因が発症のきっかけに含まれていると考えられています。

また、事故や災害に遭う、動物に襲われる、精神的に強い衝撃を受けるといった恐怖体験(トラウマ)が原因となり、後に同じような状況になったときに症状が出現する場合があります。しかし多くの場合、発症のきっかけは明確ではありません。

症状

精神面では不安や嫌悪感、憂うつ感を抱いたり、思考が停止するような感覚になったりする傾向があるといわれています。身体面では発汗やふるえ、失神、呼吸困難などを起こす場合があります。

特定のものや状況に直面していなくても、イメージするだけで恐怖心をもつことがあり、その対象を避けてしまう傾向がみられるようです。

症状が出現するきっかけとなる特定の対象や状況、環境は以下のようなものがあります。


●状況型

高い場所や閉所、暗所、エレベーター、飛行機、新幹線など

●動物型

ヘビやクモ、昆虫、犬など

●血液・注射・負傷型

血液、けが、点滴や侵襲的な医療処置、注射針など、とがっているものなど

●自然環境型

嵐、地震、雷、水、火、雨、暗闇など

●そのほかの型

窒息すること(窒息恐怖)、嘔吐すること(嘔吐恐怖)、騒音、着ぐるみ、試験など


検査・診断

恐怖症は、以下のような基準によって診断されます。

①特定の状況や対象に対し、強い恐怖や不安が存在する

②その状況に遭遇するとほぼ毎回、すぐに恐怖や不安が出現する

③そのような状況を避けて行動するか、恐怖を抱えたまま耐えている

④その恐怖や不安は、実際の危険性とは釣り合わないほど強いものである

⑤症状が原則6カ月以上にわたってみられる

⑥恐怖や不安の症状、回避行動が、日常生活・社会生活に支障をきたしている

恐怖症は、心身症や社交不安障害、強迫性障害などほかの疾患とも重なる症状がみられるため、自身で悩まずに医師の診察を受けることが大切です。


治療

恐怖症の治療は心理療法が有効とされ、場合によって薬による治療が併用されます。


●心理療法

心理療法のうち、暴露療法(行動療法)が基本になります。

まずはリラックスするために筋弛緩法、呼吸法を取り入れてから行うとよいとされており、不安や恐怖を感じる対象や状況に対し、程度の低いものから高いものへと少しずつ挑戦し慣れていく方法です。

例えば高所恐怖症では、まずは2階、次に3階、4階と挑戦し、徐々に高い所を克服していきます。犬恐怖症では、犬の絵や写真、動画を見ることから始め、慣れてきたら次は生きている犬を窓越しに、その次は窓を開けて、といった具合に少しずつ近づきながら慣れていき、日常生活で回避行動をとらなくても大丈夫な状態をめざします。


●薬物療法(薬による治療)

場合によっては、対症療法的な治療として抗不安薬が処方されることがありますが、有効性はあまり証明されていません。


セルフケア

予防

恐怖症は治療により改善が見込める疾病です。しかし、比較的幼少期から発症しているにもかかわらず、慢性的に経過しやすいことから性格的なものと捉えて見過ごされている場合も多いようです。何か思いあたる場合には医療機関を受診してみましょう。

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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