産後うつ病
さんごうつびょう

最終編集日:2022/7/26

概要

産褥期に発症するうつ病で「マタニティ・ブルーズ」とは区別されています。マタニティ・ブルーズが産後3~5日くらいに好発し、多くは一過性で数週間で改善されるのにくらべて、産後うつ病は産後2~4週、あるいは数カ月経ってから発症し、専門医の治療を受けなければ月単位・年単位で継続します。

産後うつ病の発症率は5~10%で、約50%に、すでに妊娠中から抑うつ症状が現れているとされています。

原因

産後うつ病はいくつかの要因が重なって発症すると考えられています。リスクファクターとして、周囲にサポートしてくれる人がいない(社会支援の欠如)、人づきあいがない、低収入、予期せぬ妊娠、妊娠に関する家庭内不和、パートナーや家族との離別・死別、妊婦本人のうつ病などの既往症などが挙げられています。

症状

疲れる、よく眠れない、食欲不振、気分が落ち込む、何しても楽しくない、イライラする、すべてがイヤになる、不安になって動悸がしたり息苦しくなる、などが現れます。産褥期特有の訴えとして、「赤ちゃんといても喜びを感じない」「赤ちゃんの成育が十分でない」「母親として失格かもしれない」「赤ちゃんを傷つけてしまうのではないかと思う」などがあります。深い絶望感にとらわれ、パートナーや家族の助言に耳を貸さず、死について考えることもあります。

検査・診断

問診に基づき、診断には一般的に「精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」が用いられます。診断基準は、①抑うつ気分、②興味や喜びの急激な減退、③体重減少あるいは増加、または食欲の減退あるいは増加、④不眠あるいは過眠、⑤焦燥感あるいは精神運動制止、⑥疲れやすい、気力の減退、⑦すべては価値がないと思う、⑧思考力や集中力の減退あるいは決断困難、⑨死についてくり返し考える、自殺企図、のうち5つ以上が2週間つづき、5つのなかに①あるいは②を含むもの、とされています。

治療

症状の強さによって、治療方針が決められます。

●軽症……育児の負担を軽減するための環境整備や、心理療法が中心になります。睡眠障害や不安が強ければ、抗不安薬や睡眠導入薬などを用いることもあります。

●中等症……抗うつ薬を少量から服用します。効果や副作用をみながら、投与量の調節を行います。

●重症……入院しての治療を考えます。罪悪感、絶望感、自責感が強く、自殺企図のリスクがある場合には緊急性を視野に入れた対応が不可欠です。

薬剤はほとんどが授乳中でも服用できるものですが、母乳育児が産後うつ病の改善を妨げる要因となっている場合には、授乳中止が考慮されることもあります。

セルフケア

予防

日本周産期メンタルヘルス学会では、産後1カ月前後に「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」を用いた産後うつ病のスクリーニングを推奨しています。主治医からすすめられたら、自分は大丈夫と思わず、スクリーニングを受けましょう。

また、マタニティ・ブルーズが2週間以上つづくような場合にも、1人で悩まず、パートナーや周囲の人に事情を説明し、主治医に相談するようにしましょう。

産後うつ病を防ぐには、妊娠中から、パートナー以外にも話ができる人をつくる、相談できる場をみつけるなどに努めましょう。自力では、むずかしいようなら、医師や看護師、助産師に紹介してもらうのもよいでしょう。


監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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