胞状奇胎
ほうじょうきたい

最終編集日:2022/7/26

概要

胞状奇胎は正常に受精できなかった受精卵が増殖したもので、異常妊娠の1つです。

正常な受精卵は精子由来のDNA1つと、卵子由来のDNA1つから発生しますが、胞状奇胎では卵子からのDNAが消失して精子由来のDNAのみになる「全胞状奇胎」、あるいは精子のDNA2つと、卵子のDNA1つが受精した「部分胞状奇胎」になります。いずれも正常な受精卵のように成長することはできません。

胞状奇胎では、胎盤をつくる絨毛細胞がぶどうの粒のようになって子宮内に存在することから、以前は「ぶどう子」とも呼ばれていました。絨毛細胞が異常に増殖するため、絨毛細胞に異常をきたす「絨毛性疾患」の1つに分類されています。絨毛性疾患には胞状奇胎のほかに、侵入奇胎、絨毛がんなどがあり、胞状奇胎が多くを占めています。胞状奇胎の発生頻度は、500~1000妊娠に1回です。

原因

胞状奇胎の原因はわかっていません。40歳以上の高齢妊娠はリスクファクターとされています。

遺伝的な要素はなく、次の妊娠も胞状奇胎になるのは2%程度です。

症状

正常な妊娠と同じようなつわりなどが起こります。胞状奇胎に特有の症状はあまりなく、性器出血や腹痛などの、流産を思わせるような症状がみられることもありますが、多くは妊婦健診の超音波検査で指摘されます。

検査・診断

妊娠7~12週の経腟超音波検査で、胎嚢(胎児を包む膜でできた袋状のもの)ではない、胞状奇胎に特徴的な画像が認められれば、胞状奇胎の疑いありとされます。超音波検査だけでは流産との鑑別がつけにくいため、血液中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値を測定して判断します。確定診断は、手術後の摘出物の病理検査によってつけられます。

治療

経腟的に子宮内容除去術(掻爬術)を行い、増殖した細胞を取り除きます。通常、1週間後に再度、取り残しがないように子宮内容除去術を行いますが、画像検査などで子宮のなかに病変がないと判断されれば、再度の手術は省略されることもあります。

術後の病理検査で胞状奇胎と確定診断され、さらに全胞状奇胎か部分胞状奇胎かの分類もなされます。

手術後は1~2週間ごとに血中hCG値を測定し、経過観察して、後述する侵入奇胎などへの移行の有無をチェックします。遅くとも術後6カ月で血中hCG値は正常に戻ります。その後も3~5年の経過観察が必要です。hCG値正常化までを1次管理、その後を2次管理と呼んでいます。

妊娠を希望する場合は、部分胞状奇胎では術後6カ月以降、全胞状奇胎では1年以降とされています。


●合併症

胞状奇胎の10~20%に侵入奇胎が、1~2%に絨毛がんが発生するとされています。全胞状奇胎では、部分胞状奇胎よりもその頻度が高くなります。

侵入奇胎は胞状奇胎の細胞が子宮の筋肉内に侵入して増殖するもので、前がん状態と考えられています。絨毛がんも同じような発生機序ですが、侵入奇胎よりも増殖が速く、悪性度も高いです。胞状奇胎治療後に性器出血がつづく、尿検査で妊娠反応陽性が持続する、血中hCG値が下がらないなどがあれば、侵入奇胎や絨毛がんへの移行を疑います。

侵入奇胎は胞状奇胎治療後6カ月以内に発生することが多いため、その間の検査を怠らなければ、例え移行しても適切な治療を受けることができます。


監修

小山嵩夫クリニック

小山嵩夫

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