前期破水ぜんきはすい
最終編集日:2022/7/26
概要
分娩よりも前に、胎児を包む卵膜(脱落膜、絨毛膜、羊膜の3層から成る)が破れて、なかにある羊水が流れ出てくる「破水」が起きるのが前期破水です。本来は分娩時に胎児とともに流れ出て、分娩をスムーズにさせる役割をもっていますが、胎児より先に羊水だけ流れ出てしまいます。
羊水が減少すると子宮腔内が狭くなり、胎児は圧迫されます。また、臍帯も圧迫されて血流が滞り、胎児は危険な状態に陥るため、緊急に適切な処置を行う必要があります。早産を招くことも多く、早産の約30%に前期破水が先行するとされています。
本来は陣痛が起こる前の破水はすべて前期破水ですが、臨床上は妊娠37週未満の破水を指すことが多いようです。また、子宮口が開いていないのに陣痛が起きて破水した場合は「早期破水」と呼んで別の状態とされています。
原因
前期破水の誘因となりやすい疾患として、絨毛膜羊膜炎、子宮内感染症、絨毛膜下血腫、多胎妊娠、羊水過多、頸管無力症などが挙げられます。羊水検査のための羊水穿刺が引き金になることもありますが、原因のわからない破水も多くみられます。
症状
破水というと大量の羊水が流れ出るイメージですが、尿もれと勘違いする程度の少量のもの、肌着がぬれる程度のものもあり、判断がつかないケースも多くみられます。
子宮内の感染症がある場合は、発熱、下腹部痛、頻脈などが現れることがあります。
検査・診断
破水したという申し出があればわかりやすいのですが、はっきりしない場合も多く、まず腟鏡で腟内に水がたまっているかをみます。多く用いられるのはBTB試験紙でたまった水がアルカリ性かどうかを調べる方法ですが、血液でもアルカリ性の反応が出ることがあるため1つの目安とし、確定診断には前期破水専用の試薬を用いて判断します。
治療
治療は、妊娠週数によって異なります。
妊娠34週未満で、絨毛膜羊膜炎などの感染症がなく、胎児も元気であれば様子をみることになります。常位胎盤早期剥離や絨毛膜羊膜炎などの合併症に気をつけながら、妊娠期間を延長することを目標にします。感染症の予防に抗菌薬が用いられることもあります。一般的に、約80%に、前期破水から24時間以内に自然に陣痛が起きてくるとされています。しかし、陣痛が起きるまでの期間には個人差があるため、妊娠週数、子宮口の状態、全身状態、患者さんの希望などを考慮して方針が決められます。
また、早産が予測されるときには、子宮収縮抑制薬や、胎児の肺成熟を促し、頭蓋内出血を予防する目的でコルチコステロイドを投与することもあります。
34週以降であれば、分娩を誘発する方向に治療が進められます。
しかし、34週未満でも感染症の徴候がある場合には、待機せずに分娩を誘発し、必要があれば帝王切開を行います。
セルフケア
予防
前期破水の多くは原因不明で、予防の方法がありません。ただ、絨毛膜羊膜炎などの感染症にかからないことは、前期破水の予防につながります。健康に留意した生活を送る、細菌叢バランスを崩すので腟を洗いすぎない、セックスはコンドームをつけるなどを心がけましょう。そして、発熱、下腹部痛、頻脈、おりものが増えた、おりものが臭う、などの症状があったら、すぐ主治医に相談することが肝要です。
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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