子宮頸管無力症しきゅうけいかんむりょくしょう
最終編集日:2022/7/26
概要
子宮頸管は、分娩時の胎児の出口である子宮口の、内子宮口(胎児側)と外子宮口(腟側)をつなぐ管状の部分を指します。妊娠中には袋の口をぎゅっと締めるように閉じていて、外からの雑菌の侵入を防ぎ、胎児が外に出ないようにしています。子宮頸管の長さは通常、35~40㎜。この長さが短くなったり締める力が緩んだりすると、早産のリスクが高くなります。
子宮頸管無力症は子宮頸管不全症とも呼ばれ、子宮頸管が何らかの原因で緩んでしまう病気です。妊娠中期(16週)以降に起こります。
原因
流産や中絶の既往、子宮頸がんによる円錐切除術の既往といった、子宮頸部に負担をかける治療などの既往があると起こりやすいことがわかっています。また、もともと子宮頸管が短い人も発症のリスクが高くなります。
しかし、原因不明な場合も多く、第1子は異常がなかったのに、第2子で発症したというケースも少なくありません。近年、子宮頸管が何らかの感染を起こし、それに対する反応で子宮頸管が軟化して締める力が弱くなるという説が注目されています。
次の妊娠での再発率は約30%といわれています。
症状
子宮頸管の締める力が緩んで、子宮口から胎胞(分娩時に胎児と羊水を包んだまま子宮口から出てくる袋)が腟に向かって出てきてしまいます(胎胞形成)。ほとんどは、おなかの張りや下腹部痛、性器出血などの症状がないために、入浴中に腟から何かが出ているのに気づいた、急に破水したなどでみつけることもあるようです。
子宮や子宮頸部への感染が原因となる場合は、おりものが増加した、いつものおりものと違うなどの症状がみられることもあります。
検査・診断
妊婦健診の経腟超音波検査で子宮頸管の長さが30㎜未満になったら、この疾患を疑います。また、出血や子宮収縮などの切迫流産・早産の徴候がないのに、子宮口が開いている場合もこの疾患を疑います。胎胞形成が起きていたら、速やかに処置を行う必要があります。
治療
子宮頸管の長さが30㎜未満になったら経過観察を行い、安静を保ちます。入院が必要になることもあります。おなかの張りなどの子宮収縮の徴候がみられたら、子宮収縮抑制剤を用いることもあります。また、子宮や子宮頸部に感染による炎症がある場合には、抗菌薬を投与します。
子宮頸管の長さが25㎜以下になったら、子宮頸管を縛る手術(子宮頸管縫縮術)を考慮します。
子宮頸管縫縮術にはマクドナルド法、シロッカー法などがあり、患者さんの状態に合わせて選択されます。36週くらいになったら、縛った糸を抜糸して分娩に備えます。異常がなければ通常の経腟分娩を行います。
●予防的な措置
子宮頸管無力症の次の妊娠での再発率は、約30%とされています。次の妊娠中期に再発リスクが高いと判断された場合には、予防的に子宮頸管縫縮術を行うこともあります。主治医と相談して選択してください。
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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