多胎妊娠
たたいにんしん

最終編集日:2022/7/26

概要

多胎妊娠とは、いわゆる双子(双胎)、三つ子(3胎、品胎とも)などの妊娠を指します。双胎は120妊娠に1例、3胎は4500妊娠に1例の頻度といわれます。最近は不妊治療による双胎妊娠の症例も増えています。


多胎妊娠のほとんどを占める双子(双胎)にはおもに次のような形態があります。絨毛の数は胎盤の数、羊膜の数は胎嚢(胎児が入っている袋)の数を表します。

●二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)=胎盤が2つ、胎嚢が2つ(二卵性双胎は通常、この形態)=胎児それぞれが胎盤と自分の部屋をもっているイメージ:双胎の70~75%を占める

●一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎)=胎盤が1つ、胎嚢が2つ=胎盤は1つで、胎児はそれぞれの部屋をもつイメージ:25~30%

●一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)=胎盤が1つ、胎嚢が1つ=胎盤は1つで、一部屋に一緒にいるイメージ:1%以下


双胎では一卵性/二卵性という分類を耳にしますが、妊娠・分娩においては上記のような「膜性」による分類が管理上、重要になります。

多胎妊娠自体は病気ではありませんが、母体では妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などを、胎児では発育不全、先天異常、早産、新生児合併症などを発症しやすいため、周産期センターを備えた病院で管理する必要があります。

原因

双胎の場合、1つの受精卵が早い段階で2つに分離して、それぞれに成育する「一卵性」と、2つの受精卵がそれぞれに成育する「二卵性」があります。いずれも原因は明らかになっていません。二卵性の場合、複数個の排卵を起こしやすいという母体の体質が考えられることもあります。

不妊治療が原因のこともあります。かつては不妊治療によって三つ子や四つ子を妊娠するケースもありましたが、日本産婦人科学会が「体外受精で母体に戻す受精卵を最大でも2個にすべき」と勧告したことから、三つ子以上の妊娠は減少しています。

症状

単胎妊娠にくらべて、つわりやおなかの張り、腰痛やむくみ、胃の圧迫感などが強く現れることが多いようです。また、妊娠後期にみられる、仰向けに横になると血圧が下がって気分が悪くなる「仰臥位低血圧症候群」が起こりやすいのも、多胎妊娠の特徴です。

検査・診断

超音波検査で初期の段階(妊娠4~6週頃)から多胎妊娠と診断がつきます。

双胎の場合、前述したように膜性による診断(分類)が重要になります。膜性診断ができるのは妊娠13週くらいまでであるため、妊娠8~10週くらいが膜性診断に適しているとされています。時期を逃さずに必ず診断を受けましょう。


●経過観察

多胎妊娠では、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を起こしやすく、早産や流産の頻度も単胎妊娠よりも高くなります。そのため定期的な検診で母体の管理をしっかりと行い、早産の徴候を見逃さず、リスクが高くなったら早急に適切な処置を行う必要があります。

とくにMD双胎、MM双胎の一絨毛膜双胎の場合は、妊娠14週以降は2週間ごとに検診を受けることがすすめられます。胎児の間に体重差や羊水量の差などが現れたら、入院して経過をみます。

MD双胎では双胎間輸血症候群(TTTS)の徴候がみられたら、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)を行います。TTTSは1児が羊水過多、もう片方が羊水過少となるもので胎児の死亡率が高くなり、命が助かっても後遺症が残るなど、慎重な対応が必要になる状態です。

MM双胎では胎児の突然死のリスクが高いとされています。胎児の成長に伴って頻度は下がりますが、30週を超えてもリスクはゼロにならないため、分娩まで注意が必要です。


治療

●分娩法

32週以降である、胎児がどちらも頭位である、胎児の体重がどちらも1500g以上である、などを満たせば、経腟分娩も可能です。それ以外は帝王切開の適応となります。また、経腟分娩でも分娩中に第2子が骨盤位になるなども起こり得るため、帝王切開に切り替えられることもあります。

分娩時期については、37~38週がもっとも死亡率が低いという報告があり、その前後で計画出産を行うことが多いようです。


●合併症

前述のように、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の合併率が高くなります。

また、分娩後の産後マタニティブルーの頻度も高くなるという報告もあります。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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