羊水過多、過少ようすいかた、かしょう
最終編集日:2022/7/24
概要
羊水は、胎児を包む胎嚢のなかに満たされた液体のことで、胎児の成長とともにその量は増加します。ピークになるのは妊娠30~35週で、約800mL 、40週以降は徐々に減少していきます。
羊水は、転倒や打撲などで母体の腹部に衝撃が加わったときに、胎児に伝わる衝撃を緩和するためのクッションの役目をしています。また、胎児は羊水のなかで自由に手足を動かすことで、骨や筋肉といった運動器官を形成します。羊水があることで、盛んに動く胎児の胎動も、母体に直接伝わりにくくなっています。
羊水はそのほかにも、重要な働きを持っています。
胎児は羊水を飲み、排泄しています。そうすることで、肺や消化管、腎臓などの成熟を促し、機能を向上させます。分娩後に胎児の臓器が正常に働くために、羊水を飲んで排泄することは非常に重要です。
羊水は絶えず循環し、その量は、胎児の尿産生や肺からの分泌液、母体の血流量などで、通常はバランスがとれています、しかし何らかの原因でそれが崩れると、羊水過多・過少をひきおこします。
原因
羊水量のバランスを崩す誘因として、次のようなものが挙げられます。
●羊水過多
胎児側の原因として、消化管閉鎖や二分脊椎などの奇形がある、嚥下障害や吸収障害がある、尿の産生が過剰、などが考えられます。母体側の原因として、糖尿病、多胎妊娠などがありますが、約6割は原因不明とされています。
●羊水過少
胎児側の原因として、腎臓の形成不全による尿産生障害、尿路の閉鎖による尿排出障害などがあり、羊水過少が重度の場合は肺の形成不全も考えられます。母体側の原因では、妊娠高血圧症候群、前期破水、胎盤・臍帯などの機能不全、薬剤(鎮痛薬、解熱薬など)などが挙げられますが、やはり原因が特定されないものが多いようです。
症状
羊水過多の場合、おなかが張った感じ(腹部膨満感)や頻尿、呼吸しにくい、下肢のむくみなどが現れます。羊水過少の場合、自覚症状はあまり現れません。定期健診の超音波検査で、羊水の量が少ない、あるいは胎児の動きが悪い、成長が遅いなどで指摘されることがほとんどです。
検査・診断
問診と超音波検査などで子宮や胎児の様子を調べ、羊水量の異常が疑われる場合には、超音波画像を見ながら羊水量を計測します。羊水深度法(羊水が満たされた空間=羊水腔の最大垂直深度でみる)や、羊水ポケット法(胎児を含まない羊水腔にどれくらいの大きさの円が描けるかをみる)、羊水インデックス法(子宮を4分割した空間の最大深度の総和をみる)などの方法があります。どの方法も深さを図るため、例えば羊水ポケット法の場合、8cm以上だと羊水過多、2cm未満だと羊水過少と、“センチメートル”で表されます。羊水過多の場合はおおよそ、800mLが基準値になると考えていいでしょう。ただし羊水量は母体の体格によっても違いがあります。そのため基準値はあくまでも目安と考えましょう。
羊水量を直接計測する方法(色素希釈法)もありますが、羊水中に色素を注入するなど、侵襲的(からだに刺激や負担を与える)であるため、あまり行われません。
治療
羊水過多では、入院して安静を保ちます。呼吸困難などの症状がなければ、羊水量が多めでも様子をみることが多いようです。羊水過多の原因を探り、例えば母体の糖尿病が原因であれば、血糖値の管理を行います。症状が強い場合や、妊娠期間を延長するために、腹部に穿刺針を刺して羊水穿刺を行って、羊水量を正常範囲に戻すこともあります。
羊水過少では、入院して安静を保ち、原因を探ります。母体側の妊娠高血圧症候群や薬剤が原因であれば、それを改善する治療を行います。羊水過多のように、足りない分を人工羊水で外から補うといった羊水量の調整方法はとられません。子宮腔の体積が小さいことに加え、人工羊水の効果についてはまだエビデンスがそろっていないからです。連日、超音波検査で胎児の状態や羊水量をチェックし、流産や胎児に危険が及ぶような徴候がみられたら、分娩に踏み切ります。経腟分娩も可能ですが、帝王切開になるケースも少なくありません。
セルフケア
療養中
羊水量に異常がみられても、医師の指示に従って安静を保ち、経過観察を怠らなければ、胎児への影響も少なく済み、経腟分娩が可能です。
高血圧や糖尿病などの持病がある場合や、妊娠高血圧症候群などの既往がある場合には、妊娠がわかった段階から主治医と相談して体調をコントロールするように心がけましょう。
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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