前置胎盤

ぜんちたいばん

最終編集日:2022/7/26

概要

胎盤は円形、あるいは楕円形の円板状の臓器で、子宮壁に貼りつくようにしてあります。妊娠7~8週目からつくられはじめ、15週前後で完成します。その後も胎児の成長に合わせて大きくなり、分娩時には直径20~30㎝、厚さ2~3㎜、重さは約500gになります。血管の豊富な臓器で、胎児とは臍帯(へその緒)でつながっています。


胎盤は胎児の成長に欠かせない、以下のような重要な働きをしています。

●酸素を送り、二酸化炭素を受け取る(呼吸器の働き)

●栄養分を送り老廃物を受け取る(消化器、泌尿器の働き)

●有害なものが胎児に届かないようにする(フィルターの働き)

●ホルモンの分泌(妊娠の維持や乳腺を刺激するなどの働き)


前置胎盤は、本来、子宮の上部(子宮体部)に位置すべき胎盤が低い位置にできてしまい、子宮口を塞ぐような状態になったものを指します。子宮口を覆う程度によって、全前置胎盤、部分前置胎盤、辺縁前置胎盤に分けられます。

前置胎盤は全分娩の約0.5%にみられ、経産婦に多いとされています。

原因

前置胎盤が起こる原因はまだ解明されていません。子宮の手術や帝王切開、妊娠中絶、多胎妊娠の既往がある、喫煙、高齢などがリスクファクターとして挙がっています。

症状

自覚症状はないため、多くは妊婦健診(超音波検査)で指摘されます。妊娠中期(16~27週)以降、とくに28週目以降になると、下腹部痛などを伴わない突然の出血がみられます。出血量は、「警告出血」と呼ばれる100cc前後の場合もあれば、さらに大量に出血する場合もあります。警告出血の場合では約50%が4週以内に再出血して、帝王切開が必要になるとされています。

前置胎盤では胎盤が子宮口近くにあって、胎盤と子宮壁の付き方が本来のものと異なることや、子宮口では子宮収縮が強く、胎盤が剥がれやすくなることなどが原因で、出血しやすいと考えられています。

検査・診断

診断は経腟超音波検査でつけられます。妊娠中期の妊婦健診では前置胎盤のスクリーニング検査が行われます。ただ、子宮収縮や子宮口の状態、膀胱の尿容量などが画像の描出に影響を与えて正確な診断ができないことがあります。また、子宮が大きくなるにつれて胎盤が上方に移動し、子宮口と胎盤の位置関係が変化するケースもあって、妊娠15~24週では1.1~3.9%が前置胎盤と診断され、分娩時には0.15~1.9%前後に減少するという報告があります。そのため、多くは「前置胎盤の疑いあり」として慎重に経過観察をつづけ、妊娠20週を診断時期の目安とします。早い段階で診断がつくものもありますが、遅い例でも妊娠37週までに確定診断をつけます。

また、後述する癒着胎盤が疑われる場合は、MRI検査を行うこともあります。

治療

子宮口を塞いでいる前置胎盤だけを治療することはできないため、経腟分娩を行うことはできません。帝王切開をすることになり、平均分娩週数は34~35週です。

少量の出血であれば、入院して安静にし、自然に止血するのを待ちます。出血が治まらない場合や、大量出血が起きた場合は、緊急帝王切開手術が行われることもあります。

前置胎盤の手術では、大量出血を伴うことが少なくありません。そのため「自己血貯血」がすすめられることもあります。貧血がない、全身状態がよいなどの条件を満たした場合、事前に200~400mL/回の貯血を行って、輸血に用いる方法です。


●合併症

前置胎盤の帝王切開での分娩時には、大量出血が起こることも珍しくありません。そのため、出血性ショックや、帝王切開後も出血がつづく帝王切開後出血(弛緩出血)を起こすことがあります。

また、前置胎盤の約5%に「癒着胎盤」の合併がみられます。癒着胎盤は、胎盤の絨毛膜という組織が子宮の筋肉層に侵入して癒着が強くなり、子宮から剥がれにくくなった状態を指します。多くは分娩前には診断がつきにくく、帝王切開の術中に診断された場合には、子宮全摘などが必要になることもあります。

セルフケア

療養中

●前置胎盤と診断されたら

経過観察を欠かさず、安静を保つなど、医師の指示を守りましょう。早産を回避するために待機入院になることもあります。出血がみられたら、迷わず受診します。大量に出血した場合は、救急車を呼んでも構いません。

緊急時に速やかに対応できる体制を整えておけば、ほとんどのケースで、胎児も母体も無事に分娩を終えることができます。


監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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