絨毛膜下血腫
じゅうもうまくかけっしゅ

最終編集日:2022/7/24

概要

母体と胎児をつなぐ胎盤は、血液を介して酸素や栄養、代謝物質、老廃物などをやり取りする、胎児の成長のおおもととなる臓器です。胎盤は母体側から脱落膜、絨毛膜、羊膜の3層からなっています。

絨毛膜下血腫は、脱落膜と絨毛膜の間に出血を起こし、血腫(血のかたまり)ができたもので、血腫の多くは自然に吸収されますが流産につながるケースもあるため、注意すべき病気です。

発生頻度は全妊娠の4~22%程度と考えられています。


原因

絨毛膜下血腫の発症原因は解明されていません。絨毛細胞が脱落膜に侵入する際に何らかの原因で血管を傷つけ、血腫をつくってしまうと考えられています。

症状

性器出血と子宮収縮による腹痛が起こります。

血腫が大きくなる → 子宮内圧が上がる → 圧によって出血は軽減されるが子宮収縮が起こる → 子宮収縮によって血液が外に押し出されて再度、出血 → 出血で子宮内圧が下がって子宮収縮が治まる → 血腫が増大する → 子宮内圧が上がる、というように、出血と子宮収縮を何度もくり返すのがこの病気の病態だと考えられています。

性器出血の血の色が茶褐色に変化してくるようなら、自然に止血して、血腫は吸収されて消失することが多いようです。



検査・診断

経腟超音波検査により、胎嚢(胎児を包む袋のようなもの)の周りに出血を思わせる画像がみられることで、絨毛膜下血腫を疑います。性器出血がない場合には、液体を思わせるかたまりが血液かそのほかの水(体液)かの判断をつけにくく、また、妊娠初期には絨毛膜下血腫でなくても少量の性器出血がみられることもあるため、経過観察を含めて、慎重に診断を下します。

治療

絨毛膜下血腫の多くは妊娠中期頃までに自然に吸収されて消失していきます。安静を保って血腫の増大化を防ぎ、超音波検査での定期的な経過観察を行います。子宮の収縮がある場合は、子宮収縮抑制剤を用いることもあります。

しかし、①妊娠中期以降にも出血がつづく、②血腫が消失しない、③血腫が大きい、④後述する絨毛膜羊膜炎を合併している、などの場合には流産のリスクが高くなるため、積極的な治療が必要になることがあります。

積極的な治療として、入院して安静を保ち、子宮収縮抑制剤や止血薬を用います。血腫に直接作用する薬はないため、対症療法といえるでしょう。当帰芍薬散などの漢方薬の血腫縮小効果が報告されていますが、治療法としてはまだ確立されていません。

流産・早産のリスクが高まれば、それに応じた治療が行われます。


セルフケア

療養中

自宅で安静を、と言われたら、できるだけ横になっていましょう。腹圧がかかる行為、例えば長時間キッチンに立ちつづける、風呂掃除、重い物を持つなどは避けるようにしましょう。出血がみられても、胎児の心拍に変化がなければ、妊娠は継続できます。


予防

合併すると注意を要する絨毛膜羊膜炎とは、胎児を包む絨毛膜や羊膜が何らかの菌に感染して炎症を起こすもので、代表的な早産の原因となる病気です。炎症によって膜が弱く破れやすくなり、早期に破水を起こすこと、子宮収縮を促すプロスタグランジンが活性化すること、子宮頸管が熱をもって弱くなることなどで早産を起こしやすくなります。原因菌は、常にどこにでもいる「常在菌」で、腟から上がってきます。しかし健康的で清潔な日常生活を送っていれば、感染のリスクは低いとされています。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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