産後の痔、脱肛

さんごのじ、だっこう

最終編集日:2022/7/26

概要

痔には痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔瘻(あな痔)の3種類があります。性別・年齢を問わず発症のリスクがあり、3人に1人は痔があるといわれるほど身近な疾患です。

出産後に好発するのは痔核と裂肛です。痔核は、肛門の開閉にかかわる支持組織(肛門括約筋や粘膜、間質から成る)が何らかの原因でふくらんで、緩んで伸びたものです。できる場所によって内痔核と外痔核に分けられます。脱肛は痔核が肛門から外に出た状態を指します。

裂肛は肛門の内側にある上皮が切れたり裂けたりして症状が現れます。


原因

胎児の重みで肛門周辺がうっ血することや、分娩時のいきみで肛門周辺に力が加わること、分娩時の会陰切開や会陰が裂けたりすることで肛門括約筋が傷つき、肛門の開閉が十分でなくなることなどが原因として挙げられます。

また、妊娠中から分娩後にかけて便秘になりやすく、そのことでトイレで長時間いきんだり、硬い便が出たりすることも肛門に負担をかけて痔を起こしやすくします。


症状

出血、痛み、痔核の場合の脱出が現れます。

① 出血

便の表面や拭いた紙に血がつく程度のものから、排便時にポタポタと垂れる、シャーッと噴き出して便器が真っ赤になるようなものまであります。

② 痛み

痔核では、おもに外痔核がある場合に現れます。

裂肛では排便時に強い痛みが現れます。しかし排便後は軽減されて痛みは消えていきます。

③痔核の肛門からの脱出

痔核は肛門からの脱出の程度によって、Ⅰ~Ⅳ度の進行度に分類されます。

Ⅰ度=出血はあるが脱出はない、Ⅱ度=排便時に脱出するが、自然にもとに戻る、Ⅲ度=排便時に脱出して指で押し込まないと戻らない、Ⅳ度=排便時だけでなく常に脱出していて、指で押し込んでも戻らない。

Ⅳ度になると、長時間立っているときやジョギング中などにも脱出し、脱出した痔核が下着にこすれて痛みを感じたり、下着が分泌液で汚れるなども起きてきます。重症になると、脱出した痔核が肛門括約筋で締め付けられてもとに戻らなくなり、腫れやむくみ、激痛を伴う「嵌頓(かんとん)」を起こすこともあります。


検査・診断

視診・指診や、肛門鏡を用いた検査で診断がつけられます。

肛門からの出血は、大腸や直腸が出血元であることも否定できないため、直腸ポリープやがんなどの鑑別が慎重に行われます。


治療

Ⅰ度、Ⅱ度の痔核では保存療法が行われます。排便習慣の改善を実践し、止血・消炎鎮痛作用のある軟膏や坐薬などの外用薬を用います。内服薬としては消炎鎮痛作用のあるもののほかに、便通を整える整腸剤や緩下剤などを服用します。

保存療法で改善がみられない場合や、Ⅲ度以上の痔核では、硬化療法(ALTA療法)、結紮切除術(LE)などの手術が適応されます。ALTA療法は痔核に薬剤を注射して縮小させて固める方法、LEは痔核の主血管を結んで(結紮)切除する方法です。一般的に内痔核にはALTA療法、外痔核にはLEとされていますが、内痔核・外痔核の両方あるケースも多く、そのような場合はALTA療法とLEの併用療法を行います。

裂肛は自然に治癒することが多いのですが、再発を防ぐためには排便習慣の改善は欠かせません。くり返す裂肛を放置していると慢性化してしまい、肛門周辺に潰瘍をつくる、組織が硬く線維化するなどが起こり、肛門を狭めてしまう「肛門狭窄」が起きることがあります。そこまで進行するケースはまれだとされていますが、肛門狭窄があれば手術が必要になることもあります。

セルフケア

予防

痔は保存療法で改善することも多く、また手術などの治療を行っても治療前と同じような排便習慣をつづけていたのでは、再発のリスクが高くなります。何よりもまず、排便習慣を改善して便秘や下痢を防ぐことが重要です。

・便意を我慢しない

・トイレにいるのは3~5分。便意が起きてからトイレに行く。雑誌やスマホは持ち込まない

・食生活の見直し(水溶性食物繊維を多く含む食材、乳酸菌や発酵食品など腸内環境を整える食材を積極的にとる)

・暴飲暴食をしない。アルコールや辛いものは控えめに

・浴槽につかっておしりの血行をよくする

・立ちっぱなしや座りっぱなしをしない。1時間に1回は姿勢を変える

・肛門周囲を清潔に保つ。とくに裂肛がある場合、菌に感染するのを恐れるあまり、温水洗浄便座を使いすぎてしまい、かえって肛門周辺に負担になることがあるので注意する


肛門科を受診するのをためらう人も少なくありませんが、最近は、女性医師が診る日や、女性だけが受診できる日を設ける病院も増えています。また、病状によっては日帰り手術やそれに近い手術が受けられることもあります。1人で思い悩まずに、専門医を受診しましょう。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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