骨盤位(さかご)
こつばんい さかご

最終編集日:2022/7/26

概要

通常、胎児は子宮の羊水のなかで頭を下にしていますが(頭位)、頭が上の状態が「骨盤位(逆子)」です。その頻度は、妊娠23週未満では50~70%、36週以降では4~5%と、週数が進むにつれて低くなっていきます。

そのまま分娩するとおしりから出てくることになる姿勢を「殿位」、ひざから出てくる姿勢を「膝位」、足から出てくる姿勢を「足位」と呼び、さらにそれぞれの部位が両側か片側かで分類されています。もっとも多いのは、両足を伸ばして前屈したような姿勢で臀部から出てくる「単殿位」で、40~50%を占めるとされています。


●骨盤位の分娩

骨盤位の分娩は、基本的に帝王切開とされています。骨盤位の経腟分娩の場合、頭位にくらべて以下のようなリスクが高いとされることがその原因です。①臍帯脱出が起こりやすく、新生児の仮死や死産につながりやすい、②胎児の骨折や神経損傷などの分娩外傷が起こりやすい、③分娩に時間がかかることから新生児の仮死や死産を招きやすい。

しかし近年、帝王切開が必ずしも母体・胎児の予後に有意に優れているわけではないという臨床試験報告などが発表されたこともあって「単殿位」に限って、患者さんが既定の条件をクリアし、病院の医療体制によって可能であれば、また患者さんが希望するなら、十分なインフォームドコンセントののち経腟分娩も選択できるとする病院も増えてきています。ただしその場合でも、万一の場合に帝王切開に切り替えられる状況を整えて臨むことが一般的です。

原因

骨盤位のリスクファクターとして、羊水過多、多胎妊娠、子宮の形態異常、子宮筋腫、前置胎盤・低置胎盤、早産などが挙げられています。しかし、原因が明らかでない場合がほとんどです。

症状

骨盤位に特有の自覚症状はありません。妊婦健診の超音波検査で指摘されます。

骨盤位(さかご)
骨盤位(さかご)

検査・診断

診断は経腟超音波検査でつけられます。

治療

前述のように骨盤位は妊娠週数が進むと改善されることが多いため、妊婦健診で経過観察を行います。

妊娠30週になっても骨盤位の場合、「逆子体操」をすすめられることがあります。逆子体操には胸膝法(四つんばいになって臀部を頭より高い位置に上げる)やブリッジ法(仰臥して腰の下にクッションなどを入れて骨盤をもち上げる)などがあります。必ず医師や助産師の指導のもとで行いましょう。

また、35~36週に「外回転術」が選択されることがあります。これは、子宮筋を緩める点滴と、腹筋の緊張や痛みをとる麻酔を投与した後、仰臥した母体の足を高く上げることによって、子宮内の胎児を回転させやすくする方法です。骨盤位が頭位に戻る確率は60~70%程度です。合併症として、まれに一過性の胎児の心音異常、破水、常位胎盤前置剥離などが起こることがあります。外回転術は必ず受けなければいけないわけではありません。受けずに帝王切開を選択するケースも多くみられます。

そのほか鍼灸による改善が報告されることもありますが症例数は少なく、エビデンスを得るには至っていません。鍼灸治療を希望する場合は、まず主治医に相談して指示を仰ぎましょう。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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