子宮外妊娠
しきゅうがいにんしん

最終編集日:2022/7/26

概要

受精卵が子宮内膜以外のところに着床するのが子宮外妊娠で、異所性妊娠と呼ばれることもあります。全妊娠の1~2%に起こるとされています。着床場所として、卵管、卵巣、子宮頸管、腹膜、帝王切開手術の瘢痕部(傷痕)などがあり、もっとも頻度が高いのは卵管で、約95%を占めます。

双子などの多胎妊娠や、体外受精などの生殖補助医療を受けている場合、まれに受精卵の1つが子宮外に着床してしまう子宮内外同時妊娠になるケースもみられます。

原因

卵管に着床する場合には、受精卵が卵管を通って子宮内膜に移動する途中で、何らかの要因でその移動が妨げられることが原因になります。クラミジア感染症や子宮内膜症、妊娠中絶、帝王切開の既往などによって、卵管の狭窄や癒着が起きていることが誘因として考えられます。しかし腹膜などに着床するようなケースもあり、子宮外妊娠の原因はまだ不明な点が多く残っています。


症状

子宮外妊娠は突然、激しい下腹部痛に襲われます。腹腔内に大量に出血し、出血性ショック状態(呼吸数の増加、手足の冷え、チアノーゼ、異常な発汗、意識障害などの症状があらわれる)に陥ることもあり、危険な状態になることも珍しくありません。救急搬送されて初めて子宮外妊娠とわかるケースも多くみられます。

また初期には少量の性器出血や軽度の下腹部痛があらわれるだけのこともあり、妊娠に気づいていなければ、月経やほかの原因での不正出血と思いこむ場合もあります。

激しい腹痛と出血は、卵管に着床した受精卵が大きくなることで、周囲の血管や組織を傷つけ、卵管破裂をひきおこすことによって起こります。妊娠7週目以降くらいになると、卵管破裂のリスクが高くなります。

検査・診断

問診や尿検査で妊娠が確実であるにもかかわらず、経腟超音波検査で子宮腔内に胎嚢(胎児を包む膜でできた袋のようなもの)が認められない、あるいは胎嚢が子宮腔外にある場合に子宮外妊娠が疑われ、血液検査でヒト絨毛性ゴナドトロピン値(hCG)を測定して確定診断を行います。妊娠初期には正常妊娠でも胎嚢を認めにくいこと、また流産の可能性もあるため、それらとの鑑別が必要になります。


治療

●手術……卵管の損傷部分を切除する卵管切除術を行います。治療後の妊娠を望む場合は卵管温存手術が検討されますが、卵管破裂を起こした場合や、卵管の状態によっては温存が望めない場合もあります。また、胎嚢の場所によっては、卵巣や子宮を切除することもあります。通常は腹腔鏡下で行われますが、開腹手術となるケースも少なくありません。


●薬物療法……無症状・未破裂で、hCG値や胎嚢の大きさなどが条件を満たせば、メトトレキサートという薬を用いて胎嚢を小さくする治療を行います。投与法として、超音波ガイド下による局所投与と、全身投与があります。なお現在、メトトレキサートは子宮外妊娠について保険適用外となっています。


●待機療法……胎嚢のある場所や状態によっては、また薬物療法の条件を満たし、さらにhCG値が低い場合では、胎嚢が自然に吸収されることもあるため、経過観察が可能なケースもあります。

薬物療法、待機療法の奏効率は70~90%とされています。

セルフケア

病後

卵管への子宮外妊娠は再発率が10~15%といわれています。次の妊娠の際にも卵管への子宮外妊娠を起こすリスクがあることを知っておきましょう。

卵管温存手術などで治療後の妊娠が可能な状態であるのに、治療後の不妊期間が1年以上になる場合には、卵管の状態(通過性など)を精査してもらうことをおすすめします。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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