チック症

ちっくしょう

最終編集日:2023/1/6

概要

チックとは、本人の意思とは関係なく突発的に起こる素早い運動や発声を指し、何度もくり返されます。

4~5歳が好発年齢で、多くは1年程度で改善されます。症状が長引くケースでは10~12歳頃に症状のピークを示しますが、多くは10代で症状は治まります。有病率は約10%で、男性の発症は女性にくらべ、2~4倍多くなっています。

チック症が慢性化し、より複雑な運動や発声をくり返しながら1年以上改善されない場合を「トゥレット症」と呼んで区別しています。トゥレット症の5~10%は成人になっても症状が残るとされています。有病率は0.3~0.8%です。

原因

チック症は運動機能を調整する脳や、脳内の神経伝達物質の機能障害から起こると考えられています。大脳基底核のドパミン神経系と呼ばれるしくみに発達障害があるのではないかといわれていますが、原因はまだわかっていません。

一方、トゥレット症には遺伝的な要因の関与が疑われています。

チック症、トゥレット症のいずれも神経系の病気であって、育て方や本人の性格、精神状態などが関係するものではありません。

症状

症状は、まばたき、口をゆがめる、唇をとがらせる、舌を突き出す、顔をしかめるなど、顔面から始まることが多いようです。全身では首を左右に振る、肩をすくめる、うでを振る、跳び上がるなどの症状がみられます。これらを「運動チック」と呼びます。また、せき払い、鼻をすする、状況に関係なく声が出るなどの「音声チック」がみられるケースもあります。チックの前にはからだのむずむず感やのどが締め付けられる感じ、力がわいてくる感じなどが起こるといわれています。

さらに、からだ全体の動きや、複雑な組み合わせで動くもの、意味のある言葉や文を発する、相手の言葉をくり返す、不適切な汚い言葉を発するなどの「複雑チック」を現すこともあります。複雑チックがあると、治りにくいとされています。

これらの動きを意思によって抑えることはむずかしいため、学校生活や社会生活が送りにくくなるなど、患者さんのQOL(生活の質)は著しく損なわれます。また、睡眠障害や生活リズムのとりにくさ、歩行困難を伴うケースもあります。

症状は不安や興奮、緊張など、心理的な影響によって起きたり、強くなったりすることがあります。

検査・診断

問診によって診断をつけます。チック症に特定の検査法などはありません。鑑別が必要な病気として、ジストニアなどの不随意運動を伴うもの、てんかんなどがあります。また、強迫性障害や注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症などを併発している場合があるため、慎重に診断されます。

治療

チック症をターゲットにした薬剤はまだありません。統合失調症の薬や抗てんかん薬が効果を上げる場合もあります。並行して行動療法(ハビットリバーサル)が行われます。これは、チックが起こる前に気づく訓練、拮抗反応訓練(例えば、首を振るチックをしそうになったら、あごを胸につけて首を振れなくするなど、チックと同時にはできない動作を行う)などをつづけるものです。

また、不安や緊張がチックの引き金になることが多いため、周囲の理解を得て身体的・精神的ストレスを少なくする環境づくりをすることや、リラクセーション法を取り入れることも重要です。チック症の多くは20代になる前に改善されます。あまり神経質になりすぎないことも大切です。


●成人のチック症の場合

成人のチックは、子どもの頃のチック症が治療を受けずに継続している、あるいは子どもの頃のチック症が再発した、というケースがほとんどです。チック症が重症化し、10代で改善されなかった場合、トゥレット症と診断されます。薬物療法や行動療法で効果がみられず、生活に支障をきたすような場合には、脳深部刺激療法(DBS)を考慮します。これは手術で、脳に電極を入れて胸部に植え込んだバッテリーから微弱な電流を流し、脳の機能を調整する方法です。

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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