リウマチ性多発筋痛症りうまちせいたはつきんつうしょう
最終編集日:2025/3/3
概要
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は肩や腰周辺、大腿の筋肉や関節に痛みやこわばりが生じる炎症性の病気です。「リウマチ性」とありますが、関節リウマチとは異なり、PMRはおもに筋肉の膜(筋膜)や関節の周りにある滑液包という部分の炎症が特徴です。
おもに50歳以上で発症し、とくに60歳代以降に患者数が増加、男女比は1:2~3で女性に多いとされています。
受診する診療科は、リウマチ科や膠原病科が専門ですが、まず整形外科を受診するのでもいいでしょう。
原因
正確な原因はまだ不明ですが、自己免疫機構の異常が関与すると考えられています。
からだに炎症が生じた際に血液中に増える「炎症性サイトカイン」の上昇が認められることから(とくにインターロイキン-6)、自己免疫疾患の一つと考えられています。
症状
肩関節や股関節、頸部、腰部などに痛みやこわばりが生じます。肩関節はほぼ100%の患者に、股関節は約50~70%にみられます。痛みやこわばりは突然現れ、左右対称に広がることが多く、朝のこわばりが45分以上続くのが特徴です。
動作開始時に強い痛みがあり、動かすと次第に軽減します。夜間に痛みが強くなり、睡眠障害を引き起こすこともあります。また、発熱や全身倦怠感、体重減少、食欲不振などを伴うこともあります。
PMRは一部に巨細胞性動脈炎という病気を合併することがあります。側頭部の拍動性の痛みやこめかみの圧痛(押すと痛む)、咀嚼時のあごの痛み、視力低下や視野欠損がみられたら、速やかに受診することが大切です。
検査・診断
PMRの診断は症状と血液検査を組み合わせて行われます。
血液検査では炎症マーカーであるCRPや赤血球沈降速度(ESR)の上昇がみられ、軽度の貧血がみられることもあります。一方で多くの場合、関節リウマチで陽性となる抗核抗体やリウマトイド因子は陰性となります。
画像検査としては、超音波検査で肩や股関節周囲の炎症を確認したり、MRIで炎症のある部位を特定したりすることがあります。PET-CTは巨細胞性動脈炎の評価に用いられることがあります。
50歳以上で発症し、肩の痛みやこわばりが左右両方に認められ、朝のこわばりが45分以上続く、血液検査でCRPまたはESRの上昇がみられる、自己抗体が陰性で関節リウマチなどほかの病気では説明できない、などから総合的に診断されます。
ほかの自己免疫疾患との鑑別が必要です。
治療
治療の基本は、ステロイド(プレドニゾロン)の内服です。多くは数日以内に症状の軽減が期待されます。効果がみられれば数週間かけて薬を減らし、状態を維持するために服薬を継続します。治療期間は1~2年が一般的ですが、再燃(病状がぶり返す)することもあるため、慎重な減量が必要です。副作用として骨粗鬆症、糖尿病、感染症のリスクが高くなるため、これらの管理が重要となります。ステロイドの効果が不十分な場合は、免疫抑制薬(メトトレキサートなど)を併用することもあります。
巨細胞性動脈炎を合併している場合は、高用量のステロイドが用いられることもあり、IL-6阻害薬(トシリズマブ)が併用されることもあります。
セルフケア
療養中
PMRは適切な治療を行うことで症状のコントロールが可能な病気です。治療は長期にわたるため、ステロイドの副作用の管理や生活習慣の改善が必要です。
ステロイド服用中は感染症にかかりやすくなるため、手洗いやワクチン接種などの感染症対策を行うことが推奨されます。また、高血圧症や糖尿病、脂質異常症の合併や悪化に注意し、骨粗鬆症の予防としてカルシウムやビタミンDを適切にとり、状況をみながら適度な運動を実践します。
巨細胞性動脈炎の合併を疑わせる症状(頭痛、視力障害、あごの痛みなど)の出現に注意し、定期的な診察を欠かさないようにしましょう。症状の変化に注意しながら、医師と相談し、慎重に治療を続けることが肝要です。
監修
東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授
川田浩志