脂質異常症ししついじょうしょう
最終編集日:2025/12/21
概要
脂質異常症は、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)、non-HDLコレステロールなどが、一定の基準よりも高い、またはHDLコレステロールが基準より低い状態を指します。過剰な脂質が血管壁にたまると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなります。また、糖尿病や高血圧、肥満がある人は脂質異常症を併発しやすく、動脈硬化の進行も加速するため、早期発見が重要です。
原因
多くは体質(遺伝的素因)と生活習慣が組み合わさって発症します。また脂質の過剰摂取、肥満、運動不足、飲酒なども悪化要因となります。
一方で遺伝的に脂質の代謝がうまく行われない人もいます。家族性高コレステロール血症(FH)などは原発性脂質異常症と呼ばれ、生活習慣の見直しだけでは不十分なことが多く、専門医の治療が必要です。

症状
脂質異常症自体には自覚症状がほとんどありません。しかし放置すると動脈硬化が進行し、ある日突然、狭心症や心筋梗塞などの発作が現れることが少なくありません。
検査・診断
脂質異常症には血液検査で以下の値を評価して診断します。
【診断基準】
・LDL コレステロール:140 mg/dL 以上
・HDL コレステロール:40 mg/dL 未満
・中性脂肪(TG):150 mg/dL 以上(空腹時採血)
・non-HDL コレステロール:170 mg/dL 以上
※non-HDL コレステロールは食後でも測定可能で、LDLコレステロールよりも心血管リスクとの関連が強いため、診断や治療管理に用いられます。
健康診断などで異常が見つかった場合、必要に応じて甲状腺機能、肝機能、腎機能、血糖値などの二次性脂質異常症の原因疾患の除外を行います。
治療
脂質異常症の治療は、①生活習慣の改善(食事+運動療法)②薬物療法の2本柱です。
●食事療法
脂質や糖質、過剰なカロリー摂取を控え、野菜、魚、食物繊維を増やします。
● 運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングを組み合わせると効果的です。
● 薬物療法
LDL コレステロールが高い場合、スタチンが第一選択です。
必要に応じて以下を追加します
・エゼチミブ(腸管でのコレステロール吸収を抑制)
・PCSK9 阻害薬(家族性高コレステロール血症や高リスク例に使用)
・フィブラート(高TG血症で使用)
・EPA 製剤(高中性脂肪血症・心血管リスク低下に使用)
糖尿病・腎臓病・既往歴のある人では、より厳格な LDL 管理が求められます。
セルフケア
予防
脂質異常症には自覚症状がないため、健康診断で指摘された場合は放置せず、医療機関で定期的に検査を受けましょう。
・食事バランスの改善
・適度な運動
・体重管理
・禁煙
・飲酒量の調整
これらを継続することで、動脈硬化や心血管イベントの予防につながります。
また、マーガリンやショートニングなどに含まれる、トランス脂肪酸を多く含む菓子類や加工食品のとり過ぎには注意が必要です。トランス脂肪酸の摂取過多は LDLコレステロール値を上昇させ、動脈硬化のリスクを高めるため、日常的に大量にとらないよう心がけましょう。
監修
医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長
富田益臣