混合性結合組織病こんごうせいけつごうそしきびょう
最終編集日:2025/2/27
概要
混合性結合組織病(MCTD)は全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SSc)、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の三疾患の特徴をあわせもつ自己免疫疾患です。レイノー現象がみられる、抗U1-RNP抗体という抗体が陽性になる、肺高血圧症を合併しやすいという特徴があります。
2022年の調査では国内の推定患者数は約1万人、発症者の男女比は1:13~16で女性に好発します。どの年齢でも発症しますが、30~40歳代が多いとされています。
診療はおもにリウマチ科、膠原病科、免疫内科で行われます。内科受診後に、専門医への紹介を受けるケースもあります。
MCTDは厚生労働省の指定難病になっています。
原因
MCTDは自己免疫疾患であり、その病因は完全には解明されていません。しかし、遺伝的要因や環境因子(ウイルス感染など)が関与していると考えられています。自己抗体(自分の細胞や組織を攻撃する抗体)である抗U1-RNP抗体が病態形成に関与しているとされ、免疫系の異常な活性化が発症に影響している可能性があります。
症状
初期症状として、レイノー現象や手指の腫脹(「ソーセージ様腫脹」)が多くみられます。レイノー現象では、寒冷刺激やストレスによる末梢血管収縮により、手指が蒼白、紫、赤の順に変色します。レイノー現象は患者のほぼ100%にみられ、手指の腫脹は80%以上に認められます。
SLEに似た症状として、多関節炎、発熱、顔の紅斑(蝶形や円板状の赤い発疹)、リンパ節の腫れなどがあります。とくに多関節炎は患者の約80%にみられます。
SScに似た症状として、皮膚が硬くなる(皮膚硬化)、消化管運動異常(嚥下障害、便秘)、空咳や息苦しさ(間質性肺炎を合併した場合)などが現れます。
PM/DMに似た症状として、筋力の低下・脱力や疲れやすさなどが現れ、階段の上り下りがしにくい、歩行困難、重い物を持てないなどがみられます。
MCTDは肺高血圧症を合併しやすく、10~50%の患者が発症し、動悸や息切れなどを伴います。
検査・診断
MCTDが疑われたら、血液検査で抗U1-RNP抗体の測定や、炎症を示すCRPの値、白血球数などの評価を行います。また、X線検査、CT検査、心電図検査、心臓超音波検査(心エコー)、肺機能検査、尿検査などで、合併症の有無を確認し、あわせて病気の重症度を診断します。
診断基準として、以下の①~③を満たす場合にMCTDと診断されます。
① レイノー現象あるいは手指や手の甲に腫れがある
② 抗U1-RNP抗体陽性
③ 肺高血圧症、無菌性髄膜炎、三叉神経障害のうち一つ以上、合併している
また、③の代わりに、SLE、SSc、PM/DMに類似した症状が2つ以上認められる場合も診断の基準となります。
ほかの自己免疫疾患(関節リウマチ、シェーグレン症候群など)との鑑別も重要です。
治療
MCTDの根治療法はまだ確立されておらず、症状や合併症に応じた対症療法が行われます。
中心になるのは免疫抑制療法で、ステロイド(プレドニゾロン)や免疫抑制薬(メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミドなど)が用いられます。症状の重症度にあわせて、内服、点滴、パルス療法(高用量ステロイドを短期間投与)などの治療法が選択されます。
また、肺高血圧症を合併した場合には、肺血管拡張薬(プロスタサイクリン誘導体など)を用います。間質性肺炎には抗線維化薬(ニンテダニブ)が投与されます。
セルフケア
療養中
適切な治療を行い、重篤な合併症(肺高血圧症、間質性肺炎など)を起こさず、病状がコントロールされていれば、比較的良好な生活を送ることが可能です。。
以下のような点に留意して、病状の悪化を予防しましょう。
・薬の用法・用量を守り、定期的な受診を継続する
・寒冷刺激を避け、レイノー現象を予防する
・紫外線を避ける(SLE様症状の増悪予防)
・禁煙する(レイノー現象を悪化させないため)
・消化器症状があるときには、刺激の少ない食事を心がける
・ストレスや過労を避け、十分な休養をとる
・ステロイド使用中は、感染症対策(マスク着用、手洗いなど)を徹底する
MCTDは患者それぞれにあわせた治療と管理が重要で、長期的に経過をみていく必要があります。
監修
東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授
川田浩志