食物アレルギー
しょくもつあれるぎー

最終編集日:2023/3/22

概要

からだには、細菌やウイルスなどといった病気をひき起こす可能性のある原因(抗原)から身を守る、「免疫」というシステムがありますが、ある特定の抗原に対して、この「免疫」が過剰に反応してさまざまな症状が現れることをアレルギーといいます。食物アレルギーは、食物によってひき起こされるアレルギー反応です。

食物アレルギーは、関与する抗体(抗原を体内から排除するたんぱく質)によって、大きくIgE抗体依存性反応と非IgE依存性反応に分類されています。また、反応時間によって、即時型反応と遅延型反応に分けられます。IgE依存性反応の多くは即時型反応を現します。

食物アレルギーは、乳児期から学童期にかけて多くみられます。

そのほか、花粉などの食物以外のアレルゲンが原因で食物アレルギーが誘発される特殊型食物アレルギーもあります。

原因

なぜ特定の食物に対してアレルギー反応が起こるのかは、まだ解明されていません。リスク因子として、家族歴、特定の遺伝子、皮膚のバリア機能の低下、日光やビタミンD不足などが挙げられています。

アレルギー反応を起こす食物の代表的なものとして、鶏卵や牛乳、小麦をはじめ、ナッツ類や落花生などがあります。そのほか、魚卵、甲殻類、そば、魚類などもアレルゲンになり得ます。複数の食物にアレルギーをもつケースも少なくありません。また、食物アレルギーがあると、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、花粉症などのほかのアレルギー疾患のリスクも高い傾向があり、乳幼児が成長するにつれていろいろなアレルギー疾患を発症していくさまを「アレルギー・マーチ」と呼ぶこともあります。


食物以外のアレルゲンが原因となる特殊型食物アレルギーには以下のものがあります。


●花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)

花粉症を発症した後に、特定の植物性食物の摂取によってアレルギー反応が起こるものを指します。唇や口内の腫れ、のどの違和感・腫れなど、口腔や咽頭に症状が現れることが多いため、口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれます。

スギ花粉症の人では、ナス科のトマト、ブタクサの花粉症の人ではウリ科のメロン、スイカ、キュウリなど、シラカンバやハンノキの花粉症の人はバラ科のリンゴ、モモ、サクランボなどやマメ科の大豆、ピーナツなどにアレルギー反応を起こします。


●遅延型食物アレルギーについて

遅延型反応では、アレルゲンを摂取後、数時間~数日経って、倦怠感、頭痛、下痢、腹痛、無気力、気分の落ち込み、アトピー様皮膚症状などが起きてきます。時間が経っているため、アレルゲンの特定はむずかしいことが多く「遅延型食物アレルギー検査」もありますが、有効性については定説がなく、また保険適用になっていません。同じような症状が起きるほかの疾患(慢性頭痛、過敏性腸症候群、慢性疲労、関節炎など)との鑑別もむずかしく、治療法の確立に至っていないのが現状です。

症状

もっとも多い症状は、発疹やじんましん、皮膚のかゆみ、むくみなどの皮膚症状で、90%近くの患者さんにみられます。つづいて、くしゃみ、鼻水、せき、のどの違和感・腫れ、喘鳴(ぜいめい)、息苦しさなどの呼吸器症状(約40%)、唇や口内の腫れ、目の充血・腫れ・かゆみ、涙目などの粘膜症状(約30%)、下痢、吐き気・嘔吐、血便などの消化器症状(約25%)が挙げられます。重症例では、血圧低下や頭痛、意識が混濁するショック状態(アナフィラキシー)などが認められます(約10%)。


また、アレルゲンとなる食物を摂取したあとに運動することでアナフィラキシー(症状が急速に進み、全身に及ぶ重度の反応)をひき起こす「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」という病態もあり、15歳前後に好発することがわかっています。

検査・診断

食後に発疹やじんましん、皮膚のかゆみのような症状が現れたら食物アレルギーを疑い、原因食物(被疑抗原)特定のための抗原特異的IgE抗体検査(血液検査)と食物経口負荷試験(OFC)などを行います。


抗原特異的IgE抗体検査はアレルゲン別にIgE抗体の量をみる検査です。食物アレルゲンでは、鶏卵、牛乳、小麦、ナッツ類、甲殻類、果物、魚・肉類を調べることができます。しかし検査値と症状が一致しないこともあるため、確定診断にはOFCを行うことが多くなっています。これは病院で、原因と考えられる食物を実際に少量食べることで、アレルギー反応が現れるかどうかをみる検査です。試験によるメリットが症状誘発のリスクを上回るときに行われます。重い症状が出る可能性もあるため、緊急時に対応できる態勢を整えたうえで検査は慎重に行われます。また、OFCは安全摂取量を決めるために行われることもあります。


治療

治療は「アレルゲンの除去」と「症状に対する対症療法」に分けられます。


●アレルゲンの除去

原因となる食物を食べないことで、アレルギー反応を防ぎます。食品のアレルギー表示については、必ず表示される7品目、表示がすすめられている21品目などの決まりがあり、厚生労働省や消費者庁では食品のアレルギー表示についての情報をサイトに載せています。それらを確認して、うっかり口にしないように注意しましょう。複数のアレルゲンがある場合は、栄養バランスが偏らないよう、管理栄養士の指導を受けるようにします。


●対症療法

皮膚症状やのど・鼻の症状に対して、抗ヒスタミン薬などを、喘鳴が起きていれば気管支拡張薬など、症状にあわせた対症療法を行います。また、アナフィラキシーは、速やかに救急処置を行う必要があります。


なお、花粉によるアレルギー反応(花粉症)については、アレルゲンを少量ずつ摂取して耐性をつけていく「減感作療法(舌下免疫療法)」が実施されていますが、食物アレルギーに関しては安全・確実な治療法としてまだ確立されていません。「食物アレルギー診療ガイドライン2021」でも減感作療法は「推奨しない」と記載されています。

監修

東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授

川田浩志

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