悪性関節リウマチ
あくせいかんせつりうまち

最終編集日:2022/4/11

概要

悪性関節リウマチというのは日本の考え方で、海外ではリウマトイド血管炎と呼ばれる病気です。その名のとおり、関節リウマチのほかに血管炎、あるいは胸膜炎、肺線維症などの関節以外の内臓病変があり、難治性もしくは重い病状のときに悪性関節リウマチと診断されます。

悪性関節リウマチを発症する年齢は60歳代が多く、女性が男性に比べて2倍ほど多くなっています(関節リウマチでは女性が男性の4倍ほど)。

悪性関節リウマチを発症する原因は、関節リウマチと同じように不明ですが、体質や遺伝の影響を受けているとされています。なお、悪性関節リウマチは難病に指定されています。


原因

関節リウマチ同様に、原因はよくわかっていません。関節リウマチで関節が大きく変形したり関節機能が衰えたりするものの、内臓病変が認められない場合は、悪性関節リウマチとは診断されません。

悪性関節リウマチを発症した人のうち、家族内に関節リウマチの人がいる割合が12%ほど存在することから、遺伝的要因が高い傾向がみられます。しかし、必ずしも親から子へ遺伝する病気というわけではありません。

悪性関節リウマチは、リウマトイド因子が高い値を示すケースが多く、免疫異常によって免疫複合体をつくり、血管炎の発症をひき起こしていると考えられています。


症状

関節リウマチによる多発関節炎に加え、全身の血管炎がひき起こす38℃以上の発熱、体重減少、皮膚にしこりを生じる皮下結節、筋力の低下、目の強膜の炎症である上強膜炎、皮膚に赤い斑点が出る紫斑など、血管炎に伴う症状のほか、心筋梗塞、消化管出血、肺に水がたまる胸膜炎といった症状が現れることもあります。

こうした症状は、急速に出現して悪化する恐れがあり注意が必要です。全身血管炎に伴う症状以外には、皮膚の潰瘍や手足の先に壊死が起きるほか、手足のしびれなどがあります。


検査・診断

悪性関節リウマチの診断はさまざまな症状や、血液検査、尿検査、X線検査、CT検査、MRI検査などの結果を総合的に判断します。実際の症状として参考となるのは、しびれなどの神経障害、皮膚の潰瘍や結節、目の炎症、心臓や肺の炎症、内臓器の梗塞の有無などです。悪性関節リウマチの診断においては、ほかの病気がないことを確認することが重要なため、上記の検査に加えて、血管炎の存在を確認するために、症状が出ている部分から組織を一部採取して顕微鏡で精密に検査する場合もあります。

関節リウマチの進行例やそのほかの血管炎を合併する病気、治療薬の副作用などは除外したうえで、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合は悪性関節リウマチを疑い、臨床症状や検査所見によって診断を確定します。


治療

すでに発症している関節リウマチの治療の継続に加えて、病型や重症度によって必要な治療を追加していきます。基本的な方針は、リウマチの炎症を早く取り除くことを優先します。関節炎には生物学的製剤なども使いながら、関節機能不全が進まないように留意します。

血管炎に対しては炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイド薬や、免疫を抑制する免疫抑制薬が使われます。臓器の虚血や梗塞に対しては抗凝固薬、皮膚潰瘍や指趾壊疽(ししえそ)、末梢神経炎に対しては血流改善の目的で血管拡張薬などが使われます。また、血漿交換(けっしょうこうかん)などの治療が必要な場合もあります。

これらの治療法の選択は、出現している症状や重症度などにより異なります。症状が安定するまでは入院治療が原則とされます。


セルフケア

療養中

治療中は免疫抑制薬を服用するケースも多く、免疫機能が低下することで感染症を合併することがあるため十分な注意が必要です。日常生活では手洗い、うがいなどを心がけ、バランスのとれた食事や睡眠をしっかりととり、感染症に対する抵抗力をつけましょう。

監修

東馬込しば整形外科 院長

柴伸昌

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