授乳期の乳腺炎じゅにゅうきのにゅうせんえん
最終編集日:2022/7/26
概要
乳腺炎は何らかの原因で乳腺(母乳をつくる小葉と、乳頭につながる乳管の総称)に炎症が起こる疾患です。
授乳期の乳腺炎は分娩後、6週間以内に起こることが多く、とくに2~3週間が好発時期です。発症頻度は、2~33%といわれます。
乳腺に乳汁がうっ滞して起こる「うっ滞性乳腺炎」と、細菌感染が原因となる「感染性(化膿性)乳腺炎」の2つに分類されます。
原因
●うっ滞性乳腺炎……乳管に母乳がたまることで起こります。乳管が十分に機能していない、初乳は粘度が高いために流れにくい、授乳の回数が少ない、急に授乳をやめた、乳児の吸う力が弱い、きつい肌着やシートベルトなどで乳房が圧迫される、などが誘因になります。
●感染性乳腺炎……乳頭にできた傷(乳児がかむ)などからの細菌感染で炎症を起こすこともありますが、多くは、うっ滞性乳腺炎が進行して感染性となります。うっ滞した乳汁に感染が起こりやすいことが誘因となります。
症状
片側の乳房に腫れ、熱感、痛み、圧痛(押したり触ったりすると痛む)、しこりがあらわれます。わきの下に向かって筋状に皮膚が発赤することもあります。
感染性の場合は上記の症状は強く、そのほか発熱、インフルエンザ様の関節などの痛み、悪寒、悪心などを伴います。また、乳汁中のナトリウム濃度が上がるため、乳児が患側(発症した側)から乳を飲むのを嫌がることがあります。
検査・診断
乳腺炎は「圧痛、熱感、腫れがある、くさび形をした乳房の病変で、38.5℃以上の発熱、悪寒、インフルエンザ様のからだの痛みや全身症状を伴うもの」と臨床的に定義されています。問診・視診・触診などでこれらの症状が認められれば、乳腺炎が疑われます。
治療
乳房の症状のみの場合は、主治医や助産師の指導のもと、授乳の頻度を上げる、患側から授乳する、自分でマッサージするなどで改善を図ります(次項参照)。また、搾乳して乳房内に乳汁が残らないようにします。症状が軽減されない場合は、助産師による乳房マッサージが行われます。
発熱、悪寒、乳房に現れる強い症状など、感染症の症状がある場合は、授乳に影響を与えない抗菌薬や消炎鎮痛薬、解熱剤などを用います。
セルフケア
療養中
●授乳中の工夫
乳腺炎を起こしてしまったら、授乳を控えるのではなく、次のようなことを実践しながら授乳をつづけましょう。
・頻回に授乳し、最初に患側から与える
・痛みが強い場合は、授乳を健側から始めて、患側の射乳反射(乳頭を吸われることなどが刺激になって母乳が出る反射のこと)を促し、射乳反射が起きたら患側の乳房から授乳する
・患側の乳房の乳頭に向かって、授乳中に緩やかにマッサージをして、乳汁の流れを促す
・患側からの授乳を乳児が嫌がることがあるが、その場合はなだめながら行い、あまり無理強いすることは避ける
監修
小山嵩夫クリニック
小山嵩夫
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