パスツレラ症ぱすつれらしょう
最終編集日:2025/1/28
概要
動物に咬まれる・舐められる・ひっかかれることでパスツレラ属菌に感染する病気です。国内での発症例の多くは、犬、猫によるものです。
症状はさまざまですが、呼吸器系の症状や皮膚感染の症状の頻度が高くなっています。それ以外にも外耳炎、副鼻腔炎、敗血症、髄膜炎、肝膿瘍などをひきおこすことがわかっています。
ペットブームを背景に、飼育頭数の増加や室内飼い、濃厚な接触の増加、さらには飼い主の高齢化、気密性の高い環境などがあいまって、患者数は増加しています。
人から人への感染は報告されていません。
原因
パスツレラ属菌のなかでも、パスツレラ・ムルトシダが多くを占めています。パスツレラ・ムルトシダはペットの口腔内常在菌で、犬の約75%、猫の約100%がこの菌をもっているといわれています。
呼吸器系の感染は経口・飛沫感染、皮膚の炎症は咬み傷や舐められること、ひっかかれることが原因になります。
感染・発症のリスク要因として、ペットとの過度に濃密な接触がある(一緒に寝る、キス、口移しなど)、高齢、糖尿病やアルコール性肝障害の持病があるなどが挙げられます。
症状
呼吸器症状としては、せき・たん、息切れなどが現れます。慢性的に続くこともあり、飼っているペットによるパスツレラ症の症状と気づかないこともあります。
皮膚症状では、ペットに咬まれた数時間~数日後に傷が腫れ、強い痛みが現れます。皮下組織に炎症が広がって「蜂窩織炎」と呼ばれる状態になります。また、栗の花のようなにおい(精液のようなにおい)がする浸出液(炎症部位から排出される体液)が出るのも特徴です。
検査・診断
問診からパスツレラ症が疑われたら、呼吸器症状がある場合には喀痰検査による細菌の培養、血液検査、胸部X線検査、胸部CT検査などを行います。皮膚症状に対しては、血液検査や、浸出液を採取して細菌の培養を行います。
ほかの細菌感染症との鑑別が必要です。
治療
抗菌薬を投与します。
病気を起こしている臓器に応じて、肺炎、副鼻腔炎、髄膜炎、敗血症、肝膿瘍などに対する治療を行います。
皮膚の病巣については、洗浄、必要に応じてデブリードマン(感染や壊死した組織を除去すること)や縫合を行います。
破傷風の予防として破傷風トキソイドというワクチンを接種することもあります。
治療には1~3カ月を要するとされています。
セルフケア
予防
ペットは、たとえ室内飼いでも多くの病原菌をもっています。パスツレラ属菌をもっている動物の多くは症状を示さないため、一見、健康にみえる動物が菌をもっているということを念頭に置く必要があります。
動物とは適切な距離を保つことが第一です。顔を舐めさせない、キスや口移しをしない、手などを舐められたら洗う、寝室に入れない、一緒に寝ない、犬や猫全般に不用意に手を出さないよう気をつけます。
また、糖尿病や肝障害のある人は、それらの持病をコントロールすることも大切です。
呼吸器症状がみられる場合は内科、呼吸器内科を、皮膚症状がある場合は皮膚科を早めに受診しましょう。
監修
川崎医科大学 小児科学 教授
中野貴司
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