日本脳炎
にほんのうえん

最終編集日:2023/3/30

概要

日本脳炎ウイルスによってひき起こされる感染症です。感染してもほとんどの人が無症状で済みますが、100~1000人に1人程度の割合で発症するといわれています。日本脳炎を発症した場合の致死率は20~40%と高いのが特徴です。東南アジアや南アジアで広く確認されており、温帯地域では夏季に、熱帯地域では雨季に流行がみられます。アジア諸国では年間6万8000件前後の報告がありますが、日本では定期予防接種によって患者数が減少し、現在では年間数件の報告をみるのみです。

原因

豚などの体内で増えたウイルスが蚊によって媒介され、豚から豚に感染。人には、豚から感染した蚊に刺されることで感染します。国内では豚のほか、野生のイノシシからウイルスが見つかったこともあります。ウイルスを媒介するのはおもに、コガタアカイエカで、高温多湿な気候を好み、水田に多いのが特徴です。日本にも生息しています。

症状

潜伏期間は6~16日間で、38℃以上の高熱、頭痛、嘔吐などが現れます。子どもが発症した場合、腹痛や下痢を伴うこともあります。これらの症状の後、項部硬直(仰向けの状態から頭を上げようとしても頸部が上がらない状態)やけいれん、光線過敏、意識障害や精神障害などの脳炎症状がみられることもあります。とくに乳幼児や高齢者が感染すると、死亡や重症化のリスクが高まります。

検査・診断

ウイルス性の脳炎と思われる症状(急な高熱、意識障害、けいれんなど)があり、ワクチン未接種やワクチンの不完全接種者の場合は、日本脳炎が疑われます。診断には血液や髄液による病原体の検出や、PCR検査による病原体の遺伝子の検出などによって行われます。

治療

発症すると対症療法以外に治療法はありません。日本脳炎は、症状が現れた時点でウイルスが脳に達しているため、精神障害やパーキンソン病様症状などの重篤な後遺症を残すことがあります。

セルフケア

予防

日本脳炎は治療法がほぼないに等しいため「予防」が何よりの対策です。そのために必要なのは、防蚊対策とワクチンの接種です。


コガタアカイエカは水田や沼地で発生することが多く、夏から秋にかけて活動が活発になります。夏場に水辺付近に外出する際は、長袖・長ズボンを着用し、虫よけスプレーなどで蚊に刺されないようにしましょう。


日本脳炎のワクチンが予防に有効なことは証明されており、ワクチン接種によって罹患リスクを75~95%減らすことができると報告されています。2010年から定期予防接種が「積極的勧奨」となり、初回接種は3~4歳の期間に2回、その後、追加接種を行うのが一般的です。なお、感染リスクが高い地域に滞在する際は、追加接種を検討することをおすすめします。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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