菌血症
きんけつしょう

最終編集日:2024/6/22

概要

血液中に細菌や真菌が存在する状態を指します。

数時間程度、菌が血液中に存在し、その後、生体防御機構によって排除される「一過性菌血症」、同じ菌による菌血症を何度も繰り返す「間歇的(かんけつてき)菌血症」、菌の量が多く、菌血症の状態が続く「持続的菌血症」に分類されます。

原因

肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、溶連菌、緑膿菌、カンジダ(真菌)など、さまざまな菌が原因菌として挙げられます。治療が必要な菌血症としては、腎盂腎炎(じんうじんえん)や急性胆管炎によるものが多いとされています。


●一過性菌血症

歯科治療、カテーテルの挿入(血管内、膀胱内、胆管内など)、消化管などの生検、外科的ドレナージ(体内にたまった血液や体液、うみなどをチューブを用いて排出する)、外傷などが原因で起こるものです。


●間歇的菌血症

肺炎、腎盂腎炎、胆管炎、肝膿瘍、骨髄炎、床ずれ、軟部組織の感染など、感染が改善されない場合や、ドレナージが効果的に行われないケースで起こります。人工透析用のシャントなどでも起こり得ます。


●持続的菌血症

おもに心臓や血管系の感染で起こります。感染性心内膜炎、感染性動脈瘤、血管内カテーテル感染などが原因として挙げられます。

症状

一過性菌血症は一時的なもので、通常は症状が現れません。そのほかの菌血症では、発熱、動悸、寒気、ふるえ、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛などが起こります。

検査・診断

問診で症状、感染の原因となる疾患・外傷・治療などの有無を確認し、菌の特定のために血液検査を行います。検査としては、培養法やPCR法、RT-PCR法などが用いられます。

治療

一過性菌血症の多くは、防御機構によって自然に菌が排除されるため、治療は必要ありません。自然治癒が見込めなかったり、間歇性・持続性に至っている場合には、原因菌に応じた抗菌薬を用いて治療します。投薬の目安は2週間ですが、最近は薬剤耐性菌(抗菌薬に耐性をもつ細菌。出現すると抗菌薬が効きにくくなる)の問題もあるため、可能なケースでは投与期間の短縮が試みられています。

また、感染部位と感染原因を特定し、例えばカテーテルの抜去や創部の治療、ドレナージの徹底などを行って、改善を図ります。

菌血症は適切に治療されないと「敗血症」を起こすリスクが高くなります。敗血症は感染によって活性化した自己免疫にかかわる物質が血流にのって全身に広がった状態です。炎症に対する過剰な反応によってさまざまな臓器障害を起こし、生命にかかわる事態に陥ることもあります。治療が必要にもかかわらず、適切に対策が行われていない患者さんの場合には、その約95%が敗血症を合併するとされています。

セルフケア

予防

多くは自然治癒する菌血症ですが、心疾患の既往がある、ペースメーカーや人工弁が植え込まれている、高齢者、免疫機能が低下している、大きな手術後などの場合は、症状の悪化に注意が必要です。また、日ごろからかぜやインフルエンザなどの感染症にかからないように対策することも肝要です。歯科治療や歯周病など、歯や口腔内の病気がきっかけになることもあるため、口腔のセルフケアもしっかり行いましょう。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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