百日咳
ひゃくにちぜき

最終編集日:2023/3/14

概要

感染力の高い「百日咳菌」という細菌が原因で起こる、急性気道感染症です。ワクチン未接種の乳幼児が罹患すると重症化しやすく、無呼吸発作からチアノーゼになり、呼吸不全など命にかかわることもあります。感染力は非常に強力で、百日咳にかかった患者さんがワクチン未接種の同居家族に感染させる確率は80%以上と高い確率です。

従来は乳幼児の病気と考えられていましたが、ワクチン接種歴のある小児や成人の間でも流行がみられることから2018年より「小児科定点把握」から「成人を含む全数把握疾患」に変更され、百日咳と診断された症例はすべて報告されることとなりました。ただし、実際にはせきが出る、せき込みがつづくという人は多くみられますが、百日咳の診断がされていない場合が多いと考えられています。

原因

患者さんのせきやくしゃみなどに含まれる細菌によって、飛沫感染や接触感染が起こります。大人は感染しても軽いせきがつづくだけのことが多いため、本人に自覚がないまま周囲に感染を広げていることも少なくありません。初期の段階で、かぜか百日咳かを診断することはむずかしく、百日咳が流行する大きな原因となっています。大人で2週間以上せきがつづく場合は、医療機関を受診するとよいでしょう。

症状

7~10日程度の潜伏期間を経て、かぜ症状がみられ、徐々にせきがひどくなります。症状は3つの段階に分けられます。

●カタル期(約2週間)……くしゃみ、鼻水、微熱などのかぜ症状から始まり、せきがしだいにひどくなります。

●痙咳期(2~3週間)……コンコンと激しくせき込んだ後に、ヒューという音を立てるせき発作をくり返します。しかし大人にはこのせき発作がみられず、かぜのときのような軽いせきがつづくことがよくあります。

●回復期(2~3週間)……激しいせきは少しずつ治まりますが、時折ひどくせき込むことがあります。

検査・診断

鼻の奥に細い綿棒を入れて粘液を採取し、分泌物に百日咳菌が含まれているかどうかを調べる「LAMP法」や培養検査、百日咳の遺伝子の検査、血液検査などが行われます。肺炎の有無を調べるためX線検査を行うこともあります。

治療

マクロライド系の抗生物質が使われます。とくに初期の段階(カタル期)に抗生物質が投与できると、重症化を防ぐ効果が期待できます。治療開始から1~2週間ほどで症状は治まります。せきがひどい場合は、気管支拡張剤などが処方されることもあります。

とくに初期は周りに感染させる力が強いので、百日咳と診断されたら外出はできるだけ控えて医師の指示に従いましょう。また、小さい子どもをもつ親に、せきの症状がつづくときは、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

セルフケア

予防

ワクチン接種による予防がもっとも効果的です。ジフテリア、破傷風、百日咳を混合した三種混合ワクチン、またはジフテリア、破傷風、百日咳にポリオを混合した四種混合ワクチンの接種で予防できます。しかし、予防接種を受けてから時間が経ち、免疫が低下して百日咳を発病した大人が百日咳にかかったと気づかずに、新生児や乳児へ感染させてしまうこともあります。

せきやくしゃみが出るときはマスクをする、ティッシュなどで口と鼻を覆うなどの、せきエチケットを守りましょう。

監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽浩一郎

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