デング熱
でんぐねつ

最終編集日:2023/3/29

概要

ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブ蚊によって媒介される、デングウイルスで起こる感染症です。感染した人の血を吸うことで蚊がウイルスを保有し、その蚊に刺されることによって感染が広がります。人から人に感染することはありません。

100カ国以上で確認され、とくに米国、東南アジア、西太平洋の地域では、感染による被害が拡大しており、今後も患者数が増えると予想されています。日本では1946年を最後に国内での発症はみられなかったものの、2014年に東京の代々木公園周辺で感染者が確認され、公園への立ち入り制限や注意喚起が行われました。

原因

デング熱をおもに媒介するのはネッタイシマカで、感染した雌のネッタイシマカに刺されることで感染します。ネッタイシマカは熱帯や亜熱帯に生息し、都市部に多く生息しますが、日本ではみられないといわれています。しかし、同じくウイルスを媒介するヒトスジシマカは国内で確認されており、注意が必要です。

症状

潜伏期間は2~14日間で、多くの場合、刺されてから3~7日後に38℃以上の突然の高熱が出ます。症状はインフルエンザと似ており、その後、目の奥の痛みや筋肉痛、関節痛、全身の倦怠感などが出て、発熱後3~4日後から胸部を中心に発疹がみられます。デングウイルスは4つの型に分かれ、どの型に感染しても症状は変わりません。感染しても無症状の人が多く、たとえ症状があっても通常は1週間程度で回復します。


一方、感染して症状がなかった場合でも、再度違う型に感染すると症状が重くなる傾向があります。そのため、再度感染した場合には、まれに重度の出血や体温の低下、激しい嘔吐や腹痛を起こすことがあり「重症型デング出血熱」を発症することがあります。この重症型デング出血熱は合併症や死亡のリスクが高いため、早い段階で適切な医療機関を受診することが大切です。

検査・診断

発症前の2週間以内に、デング熱が流行中の国を訪れていたり、国内で感染者が出た場所を訪れていて蚊に刺されたと思われる人が、発疹や嘔吐、頭痛、発熱などを訴えた場合、医療機関で検査を行います。検査では血液を採取し、血液中にデングウイルス特有の抗原があるか、ウイルスに対する抗体があるかなどについて調べます。

治療

デング熱のワクチンは2015年にメキシコで認可され、流行地域を中心に、現在20カ国ほどで承認されています。世界的な流行の拡大で、現在もワクチンの開発が進められています。治療は対症療法が中心です。海外からの帰国時などに発熱や筋肉痛、関節痛などがあるときは、まず検疫所で相談することが大切です。

発熱、頭痛、筋肉痛などの感冒様症状には、鎮痛解熱薬などの対症療法がとられ、通常1週間前後で改善します。再感染の場合には、重症型デング出血熱への移行の危険性があり、出血傾向が出現することもあるため、入院での点滴治療が行われます。

セルフケア

予防

流行地域に旅行するときは、肌を露出しない長袖や長ズボンを着用し、素足でサンダルを履くことは控えましょう。デング熱は都市部で流行しやすい特徴があり、とくに雨季は蚊が増えるため、感染者も大幅に増えます。なお、流行地域から国内への感染の輸入例としては、毎年200人前後が報告されています。

また、国内に生息するヒトスジシマカの活動期はおもに5~10月です。蚊の幼虫であるボウフラは少しの水でも孵化するので、空き缶やペットボトル、鉢植えの皿など、周囲にリスクのある場所がないか確認しましょう。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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