細菌性赤痢
さいきんせいせきり

最終編集日:2023/3/23

概要

赤痢には細菌性赤痢と、アメーバ赤痢があります。どちらも粘血便がみられるため、「赤い便=赤痢」と呼ばれます。細菌性赤痢は3類感染症に指定されています。

細菌性赤痢の1945年の罹患者数は約9万6000人、死亡者数は約2万人と、患者数・死亡者数ともに多い病気で、50年代までは年間7~10万人が罹患していました。しかし衛生環境の改善や病気に対する知識が広がったことなどから、現在の罹患者数は年間100人程度となっています。

赤痢菌はA~D群の4種類があり、最近はD群による軽症タイプ、無症状タイプが多くみられます。A群は溶血性尿毒症症候群(HUS)の原因になることがわかっています。

原因

赤痢菌に感染して起こります。菌に汚染された手指、食器などから経口感染します。また、保菌者の看護をする際に保菌者の糞便から、あるいは感染流行地域での生水などからも経口感染します。感染力は強く、集団感染が起こることもあります。

症状

発熱、腹痛、水様性から粘血便に移行する下痢、しぶり腹(テネスムス)が典型的な症状として現れます。潜伏期間は1~5日です。

軽症例では、軽度な発熱、下痢が現れる程度です。

検査・診断

症状や渡航歴などの問診とともに、糞便細菌培養検査で菌の同定を行います。

抗菌薬に対する耐性をもった菌が増えているため、薬剤感受性検査も行われます。

治療

抗菌薬投与と対症療法が行われます。対症療法では、脱水に対する輸液や、整腸薬を用います。止瀉薬の使用は菌の排出を遅らせることがあり、注意が必要です。

軽症例では治療を行わなくても1週間程度で治癒します。安静を保ち、水やスポーツドリンクなどで水分補給に努めましょう。


●溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併したとき

HUS合併例では、重度の貧血や腎不全症状(尿量の減少、むくみ、吐き気、けいれんなど)が現れます。腎臓内科の管理の下、治療が行われます。

セルフケア

予防

家庭内に保菌者がいる場合、糞便の始末の際には手袋を着用すること、排便後や食事前の手洗いを心がけます。

感染地域に旅行する際には、渡航先で生水、生ものを口にしないことが重要です。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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