ポリオぽりお
最終編集日:2023/3/20
概要
ポリオはポリオウイルス感染によって発生する病気で「急性灰白髄炎(きゅうせいかいはくずいえん )」あるいは「脊髄性小児麻痺」とも呼ばれます。小児の感染が多かったことから小児麻痺という名前がつけられていますが、成人でも発症します。感染した場合、弛緩性麻痺を起こす割合は1%以下とされています。しかし、麻痺性の急性灰白髄炎を発症した場合には、小児での死亡率は2~5%といわれ、成人のほうが重症化しやすく15~20%が死亡するといわれています。
かつては世界中に1~3型の3つのタイプの感染がみられましたが、ワクチン接種により患者数が激減し、2型、3型は根絶宣言がなされ、現在は1型のみが発生しています。国内では危険性が高い感染症として2類感染症に指定されています。
根本的治療法がない現在、ワクチン接種による抗体獲得が重要であるとされています。
原因
ポリオウイルスが脊髄の灰白質で増殖して炎症を起こします。
感染経路は、感染者の糞便中のウイルスが経口摂取されて腸管などで増殖し、血流を介して脊髄に到達し、神経細胞を侵します。潜伏期間は3~21日です。
症状
感染しても90%以上が無症状で免疫を獲得します。
約5%にのどの痛み、せき、発汗、下痢、便秘、吐き気・嘔吐などのかぜのような症状が現れ、0.5~1%に麻痺を伴わない髄膜炎症状(発熱、頭痛、項部硬直など)が、約0.1%に麻痺症状が起こります。
麻痺は弛緩性の麻痺で、下肢を中心に起こり、突然の筋力の低下と筋肉の委縮がみられます。多くは左右非対称で急速に進行します。呼吸困難や嚥下困難を伴うこともあり、呼吸筋の麻痺を起こし、死に至るケースもあります。
検査・診断
感染症状につづいて麻痺の症状が起こった場合、ポリオを疑い、便検体でウイルス検査を行います。ウイルスが検出できれば確定診断となります。MRIで脊髄灰白質の前角の異常の有無、神経生理学的検査で運動神経細胞の異常の有無を調べることもあります。
治療
現時点で、ポリオウイルスに有効な抗ウイルス薬はありません。対症療法による症状の緩和、合併症の予防が行われます。
呼吸困難がみられれば人工呼吸管理などの対症療法が行われます。
また、しばしば長期にわたるリハビリテーションが必要となり、運動機能の回復・維持に努めます。
セルフケア
予防
●ワクチン接種
日本で用いられているのは不活化ワクチンで、99%が抗体を獲得できるとされています。
ポリオワクチンは、遅くとも7歳半までの間に4回接種することが原則で、一般的に、4種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ)として生後3カ月から接種できます。
国内でのポリオの感染は、1981年以降発生していませんが、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアなどでは現在でもポリオの流行はつづいています。海外からウイルスが持ち込まれる可能性も考えられるため、ワクチン接種は必ず受けておきましょう。副作用としては発熱が50%以下、発疹は10%以下、重大なものはごくまれとされています。
監修
昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授
藤本司
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