重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
じゅうしょうねっせいけっしょうばんげんしょうしょうこうぐん

最終編集日:2023/3/27

概要

SFTSウイルスを保有する「マダニ」にかまれることで起こる感染症です。2011年に中国で最初に報告され、現在は中国のほか日本や韓国、ベトナムを中心にアジア地域で流行しています。国内での感染者は年々増加傾向にあります。また発生地域も当初は西日本のみとされていましたが、2021年に静岡県などでも確認され、これまで予想されていたより広い地域で感染が拡大している可能性があります。


マダニは家屋内に生息するダニとは異なり、おもに森林や草地、畑などに生息しています。国内では2012年に多臓器不全で死亡した患者さんの血液からSFTSウイルスが検出されました。このウイルスの分析結果から、中国の流行地域から入ってきたものではなく、以前から日本に存在していたウイルスであることが確認されています。

原因

マダニにかまれることで発症します。また最近の研究では、鹿などの野生動物や猫、犬などの血液からSFTSウイルスが見つかっており、感染した犬や猫にかまれることで感染する可能性も否定できないといわれています。なお、国内には50種近いマダニが生息するといわれ、その中で「フタトゲチマダニ」と「タカサゴキララマダニ」が人への感染にかかわっています。

症状

6~14日間の潜伏期間を経て、38℃以上の発熱や倦怠感、嘔吐、腹痛などの消化器症状や頭痛などが起こります。重篤になると意識障害や消化管出血、呼吸不全が起こり、多臓器不全で死亡するケースもあります。


マダニにかまれても痛みやかゆみがないこともあり、かまれたことに気づかない場合も多いといわれています。予後は比較的良好ですが、国内で確認された患者さんの9割が60歳以上で、高齢者ほど重症化しやすいと考えられます。

検査・診断

皮膚についたマダニの多くは数日から10日にわたって血を吸いつづけます。吸血しているマダニを慌てて引き抜くとからだの一部が体内に残ったり、体液を逆流させてしまったりすることがあるので、見つけたら自分で処理せずに、必ず皮膚科を受診しましょう。

マダニにかまれてから2週間ほどの間に発熱や倦怠感などの症状があれば医療機関を受診し、採血で白血球の値をみる検査や尿検査などが行われます。

マダニにかまれたことに気がつかない場合もあるので、田畑や山林、野生動物が多くいる場所を訪れた後に体調の変化があった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

治療

ワクチンや治療法はなく、症状に応じた対症療法を行います。高熱の場合はからだを冷却し、低ナトリウム血症の患者さんには水や電解質を必要に応じて与えます。二次感染を起こした場合には抗菌薬を使う場合もありますが、投与は慎重に行われます。

セルフケア

予防

ダニが活発に活動する春から秋(3~11月)が流行期なので、マダニにかまれる危険性が高まります。森林や草むらなどマダニが多く生息する場所を訪れるときは長袖の服や長ズボン、帽子や手袋を着用しましょう。首元にはタオルを巻く、ズボンの裾は靴の中に入れるなど、極力、肌を露出させないことが大切です。


屋外から戻ったら家に入る前に手首、ひざの裏、頭部などを中心に、マダニにかまれていないかを確認します。洋服は明るい色のものを選ぶと、マダニの有無を確認しやすいでしょう。ディートなどを配合したマダニ用の虫除け剤を使うのも効果的です。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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