肺炎球菌感染症
はいえんきゅうきんかんせんしょう

最終編集日:2022/3/29

概要

肺炎球菌という呼吸器病原性菌によってひき起こされる病気を、肺炎球菌感染症といいます。肺炎球菌は健康な人の鼻やのどの奥に常在していることが多い細菌で、通常は重篤な感染症をひき起こすことはありません。

しかし、2歳未満の乳幼児では重い症状が現れることがあり、治ったとしても後遺症を残す場合があります。また65歳以上の高齢者や慢性疾患をもつ人などでは重症化することもあります。


原因

気道の分泌物に含まれる肺炎球菌が、唾液などを介して飛沫感染します。何らかの原因で抵抗力が落ちたり、粘膜バリアが傷ついたりしているときに感染すると発症します。

肺炎球菌は肺炎の原因となるだけでなく、慢性呼吸器感染症、中耳炎、副鼻腔炎、敗血症、髄膜炎などの原因にもなります。


症状

悪寒、息切れ、せき、全身のだるさなどの症状が突然現れるのが大きな特徴です。38℃以上の熱が長くつづき、深く息を吸い込んだり、せきをしたりしたときに、強く刺すような痛みが左右の胸のどちらかに起こることもあります。

肺炎球菌感染症は発症する部位によって肺炎、髄膜炎、中耳炎などが起きますが、乳幼児が髄膜炎を発症した場合には約2%が死亡するというデータがあります。また治癒しても10%に難聴や四肢麻痺(まひ)、てんかんなどの後遺症が残るといわれています。


検査・診断

肺炎球菌性感染症を発症した人の約40%に胸水(肺を覆う2層の胸膜間に体液がたまった状態)がみられます。

胸部X線検査で肺炎の徴候がないかを確認し、たんのサンプルを採取して顕微鏡で検査を行います。たんやうみ、血液の培養検査なども行い、どの抗菌薬が効果的かを探ります。


治療

ペニシリンなどの抗菌薬で治療を行います。通常は内服薬として処方されますが、重症の場合には、点滴による静脈内投与を行います。

セルフケア

予防

肺炎球菌性感染症の予防にはワクチン接種が有効です。高齢者と乳幼児には助成制度も用意されています。各市区町村の窓口、もしくは医療機関に問い合わせてください。



監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽浩一郎

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