アルコール性肝障害
あるこーるせいかんしょうがい

最終編集日:2022/4/5

概要

5年以上の長期間、多量の酒を飲みつづけることで起こる肝臓障害の総称です。肝臓に障害が起きると最初に発症するのがアルコール性脂肪肝です。そこからアルコール性肝炎、アルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変へと病気が進み、重症化していきます。

沈黙の臓器といわれる肝臓は、ダメージを受けていてもなかなか自覚症状が現れません。一見健康そうにみえても、アルコール性肝障害を発症していることがあるので注意が必要です。


原因

アルコール性肝障害の原因は多量飲酒です。

アルコールは、おもに肝臓でアセトアルデヒドから酢酸へと分解・代謝されます。多量にアルコールを摂取しつづけると、分解酵素の働きでより多くのアルコールを分解できるようになりますが、やがて分解能力を超えた肝細胞の変性や壊死を招き、肝臓の機能は低下します。こうして起こるのがアルコール性肝障害です。

アルコールを分解する能力は個人の体質によって異なるため、例えば“日本酒を何合以上飲むとアルコール性肝障害になる”と一概にいうことはできませんが、多量飲酒の基準は、日本酒なら1日3合分とされています。一般的には、男性よりも女性は少ないアルコール摂取量でアルコール性肝障害を発症するといわれています。


症状

初期段階では自覚症状はほとんどありません。多くの人が健康診断などで指摘され初めて気づきます。この段階で生活習慣を見直し、飲酒をやめれば症状が改善することが期待できます。

自覚症状がないからと飲酒をつづけると、症状が進んで肝機能が低下し、全身の倦怠感や食欲不振、腹部の張り、疲れやすさなどを感じるようになります。病気が進行してアルコール性肝線維症からアルコール性肝硬変になると黄疸やむくみ、腹水などが現れます。肝性昏睡を起こし、生命にかかわるような危険な状態になることもあります。さらにアルコール性肝硬変から肝臓がんになるケースも増えているため注意が必要です。



検査・診断

肝臓の病気は、初期段階では自覚症状が現れないため、健康診断の血液検査において、肝機能などを表すAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)の数値で異常に気づくことがあります。

問診では、現在の飲酒量と飲酒歴について聞きとります。アルコール性肝障害はアルコールが原因で起こる病気のため、飲酒量やその習慣を正確に把握する必要があります。肝臓の状態を調べるために腹部超音波検査やCT検査などの画像検査を行い、中性脂肪がどのくらい蓄積されているのか、肝細胞の線維化はどの程度進んでいるのかなどを確認します。肝臓の一部を採取して顕微鏡で観察する肝生検を行うこともあります。

アルコール性肝障害は、アルコール依存症に伴って発症することが少なくないため、精神科医と連携してアルコール依存症の診断を行うこともあります。

治療

治療の基本は、禁酒と食事療法です。肝硬変の前段階であるアルコール性肝線維症は、禁酒によって肝臓を休めることで症状が悪化するのを防ぐことができ、肝臓を健康な状態に戻すことも可能です。

食事療法では、脂肪分の少ないバランスのとれた食事が重要となります。偏りがちな食生活を見直し、不足している栄養素を補うように心がけることで肝機能の改善が望めます。

また、この病気はアルコール依存症を伴っている場合も多いため精神科医によるカウンセリング治療も重要です。

初期段階のアルコール性肝障害では、禁酒、食事療法に加えて軽い運動により症状が改善することも少なくありません。

病気が進行して重症化してしまった場合には、入院治療が必要なこともあります。肝硬変に進んだ場合は肝移植を検討することもあります。


セルフケア

療養中

アルコール性肝障害を改善させるためには、禁酒を前提として基本的な生活習慣を整えることが重要です。アルコール依存症となっている場合も多いため、生活習慣を見直し、十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送るように心がけましょう。治療には根気が必要です。主治医の診察を定期的に受診し、血液検査で肝機能の数値をチェックしてください。主治医と相談しながら治療を継続していくことが重要です。

予防

アルコール性肝障害にならないためには、1日の飲酒の適正量を守る、週2日は酒を飲まない休肝日を設けるなど、日頃から飲酒習慣を管理することが大事です。飲酒の適正量と一言で言っても、個人の体質によってその量は異なります。男性より女性は少ない飲酒量で肝臓にダメージが生じるとのデータもあります。多量飲酒の基準は、日本酒なら1日3合分(ビールなら中びん3本)という数値がありますから、毎日3合以上の飲酒は、ほとんどの人にとってよくないといえます。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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