ジフテリア
じふてりあ

最終編集日:2023/9/19

概要

ジフテリア菌に感染して起こる病気です。2類感染症に指定されています。

現在、日本では乳児期から定期接種可能な四種混合(DPT-IPV)ワクチンをはじめ、三種混合(DPT)ワクチン、二種混合(DT)ワクチンなどがジフテリアの予防も対象となっていることから、発症頻度は非常に低くなっています。1999年に1例の報告がありますが、2000年以降、感染の報告はありません。しかし、ロシア、ウクライナ、中央アジア諸国など多くの地域で発生がみられ、死亡率は約10%、とくに5歳以下と40歳以上で重症化しやすいとされています。該当地域に渡航の際には注意が必要です。

原因

ジフテリア菌が上気道(鼻から咽頭を経て喉頭まで)に感染することが原因です。感染者から飛沫感染します。重症例では、ジフテリア菌が出す毒素が原因で重篤な症状が起こります。

症状

潜伏期間は2~5日で、初期症状として発熱、頭痛、嘔吐、せきなどが生じ、次第に咽頭痛、頸部リンパ節腫大、嗄声(させい:声がかれる)、呼吸困難、末梢神経麻痺などの症状を認めます。感染部位によって、以下のようなさまざまな症状が現れます。


●鼻ジフテリア……血の混じった鼻汁、鼻の粘膜のびらん(ただれ)。

●扁桃・咽頭ジフテリア……扁桃腺やのどの粘膜に灰白色の膜が張り、剥がそうとすると出血する。

●喉頭ジフテリア……嗄声(かすれ声)、犬吠様咳嗽(犬が吠えるときのようなせき)。ジフテリア菌が出す毒素による症状として、のどや目などの神経麻痺、たんぱく尿などが起こります。また、発症から1~2週間後に、胸痛、呼吸困難、動悸、むくみなどが現れる「心筋炎」を併発することも。ただし、症状が現れるのは感染者の10%程度といわれ、無症状のまま保菌者となって、感染を広げるケースも少なくありません。

検査・診断

症状のほかに、海外渡航歴を確認し、上気道の粘膜を採取して細菌検査とジフテリア毒素の有無を調べます。毒素による重症化を防ぐために、腎機能検査や心電図検査を行うこともあります。日本での発症は非常に少ないため、ジフテリアに似た症状があれば、ほかの感染症(伝染性単核球症、アデノウイルスやヘルペス、溶血連鎖球菌などの感染)を疑い、鑑別診断を行います。

治療

抗菌薬を用いた薬物療法が行われます。同時に、ジフテリア毒素による症状が起きていなくても予防のために、ジフテリア抗毒素血清を投与します。

セルフケア

予防

●ワクチン接種について


定期接種から10年以上経過するとジフテリアに対する免疫が低下し、ワクチンの予防効果も低下していると考えられます。ジフテリアの発生地域に出かける際は、厚生労働省や厚生労働省検疫所のサイトなどで流行状況を確認し、長期滞在の場合には、かかりつけ医に相談して任意接種を受けることをおすすめします。ワクチン接種で発症リスクを約95%減らせるとされています。万一、感染が起きた場合、発症者の家族などの濃厚接触者は、ワクチン接種状況の確認や保菌状態の確認の後、必要であればワクチン接種が行われます。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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