先天性風疹症候群
せんてんせいふうしんしょうこうぐん

最終編集日:2023/3/26

概要

風疹ウイルスへの免疫が十分にない妊娠中の女性が、風疹ウイルスに感染することで胎児に障害が起こる病気です。頻度が高い症状は「難聴」「白内障」「先天性心疾患」です。そのほか、網膜症や糖尿病、発育の遅れ、精神発達遅滞などが起こることもあります。


妊娠20週頃までの妊娠前期に風疹ウイルスに感染するとリスクが高くなります。胎児に異常がみられる頻度は妊娠週数に関係しており、妊娠2カ月頃までは目、心臓、耳に広く症状をもつといわれています、妊娠2カ月を過ぎるとおもに耳(難聴)や目(網膜症)の障害が多く報告されています。

原因

風疹は発熱や発疹、リンパ節の腫れなどがおもな症状ですが、感染しても症状がない人や、症状があっても軽いかぜと認識している「不顕性感染」の人も少なくありません。これらの人が保菌者となり、妊婦に感染させてしまうことがこの症候群の原因です。

そのため風疹の大規模流行とともに、先天性風疹症候群の発症率も高くなります。2012~2013年の国内での大規模流行では、妊娠・出産に関係する20~40代の男性と20代の女性に多くの風疹の患者さんが発生しました。その間(2012~2014年)の先天性風疹症候群の患者数としては、過去最多となる45人が報告されています。

症状

「難聴」「白内障」「先天性心疾患」の3大症状がよくみられます。とくに難聴は非常に大きな音しか聞こえない「高度難聴」が多いといわれています。

精神やからだの発達の遅れなどの症状をもつ赤ちゃんが生まれる可能性がありますが、個人差が大きく、また出生後すぐには症状がないため、気がつくまでに時間がかかることもあります。

検査・診断

採血で抗体検査が行われます。先天性風疹症候群の赤ちゃんは母親の体内で感染しており、出生後の血液検査は風疹の抗体が陽性になります。PCR法で風疹ウイルスの遺伝子を検出する方法や、赤ちゃんの尿や唾液などからウイルスを分離する方法もあります。

治療

治療法はなく、対症療法が中心となります。心臓に障害を生じる心疾患の場合は、手術が可能になる年齢になってから必要な手術を行います。白内障は軽症の場合は経過観察となることもありますが、重症の場合は手術できる年齢になるのを待ちます。

難聴は程度によって補聴器が必要とされることがあります。もし補聴器を用いても十分な聴力がない高度難聴の場合は、1歳以上であれば「人工内耳装置」の手術が検討されます。

セルフケア

予防

風疹のワクチンを妊娠前に接種し、十分な抗体を獲得しておくことが重要です。妊娠中のワクチン接種はできないため、妊娠の可能性のある女性とそのパートナーは、抗体検査で風疹に対する免疫の有無を調べ、抗体が陰性あるいは不十分な場合は、風疹含有ワクチン(麻疹風疹混合ワクチン、あるいは風疹ワクチン)を接種して風疹に対する免疫をつけておきましょう。またワクチン接種後、2~3カ月間は避妊の必要があります。

抗体検査は一般の医療機関でも受けることができ、自治体によっては助成金が出ることもあります。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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