エムポックス(サル痘)えむぽっくす・さるとう
最終編集日:2024/6/23
概要
中央アフリカから西アフリカにかけて発生するウイルス感染症です。かつては「サル痘」と呼ばれていましたが、2023年に名称が変更になりました。
わが国では4類感染症に分類されています。4類感染症は「人畜共通感染症」で、動物や昆虫などを介してヒトに感染します。マラリアやリケッチア感染症(ツツガムシ病)、日本脳炎などが含まれています。エムポックスの宿主はアフリカに生息するげっ歯類ではないかと考えられています。わが国での感染者は、2022年に初めて報告され、2024年3月までに250人近くの感染者が確認されています。
※2024年4月22日時点の内容です。
原因
エムポックスウイルスに感染して起こります。エムポックスウイルスは、おもにコンゴ盆地型と西アフリカ型に分けられ、コンゴ盆地型は重症化しやすく、感染力が高いとされています。感染した動物にかまれる・感染動物の血液や体液に触れるなどが感染原因となります。ヒトからヒトへの感染は、接触感染や飛沫感染で起こりますが、頻度は低いと考えられています。
症状
潜伏期間5~21日ののち、発熱、リンパ節の腫れ、筋肉痛、頭痛などが起こり、1~5日続いたあと、顔から徐々に体幹部に広がる発疹が現れます。発疹は水疱化、または膿疱化し(うみをもち)、かさぶたになって4週間以内に治まります。発疹は口腔粘膜や陰部の粘膜、眼の粘膜(結膜、角膜)にも現れることがあります。
ただし、上記のような症状が必ず起こるとは限らず、発熱やリンパ節の腫れが見られない場合や、発疹が体幹に見られないケースなどもあり、診断に時間がかかることもあります。
検査・診断
症状、発疹の視診などでエムポックスが疑われたら、水疱の液体やうみを採取してウイルスやウイルス遺伝子の存在を調べます。検査法としてはPCR法、蛍光抗体法などの方法があります。
同じように発疹が出現する水疱瘡(水ぼうそう)、梅毒、天然痘などとの鑑別が重要です。
治療
現時点ではエムポックスに対する抗ウイルス薬は開発されていません。発熱や頭痛、発疹に対して対症療法がとられます。多くは2~4週間で自然治癒します。しかし、乳幼児や基礎疾患がある高齢者などでは、重症化することがあるため、慎重な対応が必要です。
海外では、天然痘の抗ウイルス薬(テコビリマット)がエムポックスにも承認されていますが、わが国では臨床研究の段階です。そのほかにもいくつかの抗ウイルス薬の開発が進められています。
セルフケア
予防
天然痘ワクチンで約85%に発症の予防が可能とされています。しかし、わが国では、エムポックスの予防目的での天然痘ワクチンの接種は行われていません。
感染予防のため、感染流行地域では、げっ歯類などの野生動物との接触を避けます。また、ヒトからヒトへの感染リスクはそれほど高くないとされていますが、感染者・感染が疑われる人との接触、近距離での対面、感染者の使用した衣類・寝具・道具などに触れることなどは控えましょう。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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