肝炎かんえん
最終編集日:2023/10/12
概要
さまざまな原因によって、肝臓に炎症が起こるものを指します。急性に症状を現す「急性肝炎」と、急性肝炎が6カ月以上継続した「慢性肝炎」に分けられます。急性肝炎では、急激に悪化して肝不全をひきおこす「劇症肝炎」のリスクがあります。慢性肝炎では、肝硬変や肝不全、肝臓がんの発症率が高くなります。
ウイルス性肝炎がよく知られていますが、そのほかにも自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などがあり、炎症を起こす原因によって、好発年代、経過、治療法が異なります。
原因
ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルス(A、B、C、E型)や、そのほかのウイルス(EBウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルスなど)に感染して起こります。自己免疫性肝炎は、自己免疫系の異常によって肝細胞が攻撃されて炎症を発症します。アルコール性肝炎はアルコールの過剰摂取が原因となり、NASHは脂肪肝を背景に起こります。
A型、E型のウイルス感染は一過性で、慢性化することはありません。B型は胎児期、小児期に感染すると慢性化しやすく、C型は世代を問わず約70%で慢性化がみられます。アルコール性肝炎、NASH、自己免疫性肝炎は、慢性的な経過をたどります。
症状
ウイルス感染による急性肝炎では発熱、のどの痛みなどのかぜのような症状を覚え、その後、食欲不振、吐き気・嘔吐、黄疸(おうだん)、褐色尿、倦怠感などが起こります。黄疸の出現に伴い、皮膚の掻痒感(かゆみ)、発疹などが現れます。
しかし強い症状がみられず、感染に気づかないこともあります。そのまま炎症が継続して慢性化しても、肝臓は予備能力が高いため、ある程度進行するまで自覚症状はあまりありません。数年、数十年経ってから、倦怠感、微熱、食欲不振などが現れてきます。
検査・診断
血液検査で、原因の特定、肝機能の障害や全身状態などを調べます。腹部超音波(エコー)検査や、CT、造影CT、MRIなどの画像検査で、肝臓の様子を精査します。慢性肝炎では、肝硬変や肝不全、肝臓がんなどを発症していないかの確認も重要です。
治療
急性肝炎の多くは、安静を保ち、症状のピークを見極め、重症化の徴候を見逃さないようにします。基本的に肝炎に対する薬物療法は行わないとされています。
慢性肝炎では、それぞれの原因にあった治療が行われます。ウイルス性肝炎では抗ウイルス療法が、アルコール性肝炎では禁酒が、NASHでは脂肪肝の改善が、自己免疫性肝炎ではステロイドによる治療が進められます。
セルフケア
予防
ウイルス性肝炎では感染リスクの高い行動をとらない(他人の血液に触れない、ピアスの穴開けは衛生的な環境で行う、不特定多数との性行為を避ける、生ものをできるだけ食べないなど)ことが大切です。
そのほかの肝炎では、節酒・禁酒に努め、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を改善することなどが肝炎の予防につながります。
監修
鳥居内科クリニック院長
鳥居明
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