肝良性腫瘤性病変

かんりょうせいしゅりゅうせいびょうへん

最終編集日:2023/12/12

概要

肝臓には良性の腫瘤性病変が発生します。肝嚢胞、肝血管腫、限局性結節性過形成、肝細胞腺腫などがあり、健康診断の腹部超音波(エコー)検査などで指摘される場合が多くみられます。ここではとくに頻度の高い、肝嚢胞(単純性肝嚢胞)と肝血管腫について説明します。


●肝嚢胞

嚢胞はなかに液体がたまった袋状の病変で、肝嚢胞は肝臓に発生したものを指します。

先天性のものと後天性のものに分けられ、通常、肝嚢胞という場合には、先天性のものをいいます。先天性のものは単純性肝嚢胞(孤立性肝嚢胞)と多発性肝嚢胞(肝線維性多嚢胞性疾患)があります。多発性肝嚢胞では、腎臓や肺、膵臓などにも嚢胞ができやすく、胆管拡張や肝臓の線維化を伴うものもあります。単純性肝嚢胞の多くは、肝臓の右葉という部分に発生します。罹患者の約80%は40代以上で、女性に好発します。


●肝血管腫

毛細血管に関係した組織が拡張したり増殖したりしてできる腫瘍で、ほとんどはスポンジ様の「海綿状血管腫」です。健康診断を受けた人の5~6%にみられ、中高年の女性に多く、男女比は約1対3とされています。

原因

先天性の肝嚢胞は、発生学的な原因があると考えられていますが、まだ明らかにはなっていません。後天性の肝嚢胞は、外傷、肝臓周辺の炎症、腫瘍、寄生虫などが原因で、二次的に起こります。

肝血管腫の原因は不明ですが、女性に多いことから、女性ホルモンの関与が指摘されています。

症状

肝嚢胞も肝血管腫も、嚢胞や腫瘍が小さい場合、無症状なことが多く、腹部超音波検査やCT検査で偶然見つかることがほとんどです。

肝嚢胞では嚢胞が大きくなると、腹部膨満感、吐き気、上腹部に鈍痛が現れることもあります。また嚢胞が感染を起こすと、発熱や腹痛が起こります。嚢胞が大きくなるとまれに嚢胞内出血を起こし、貧血を認めることがあります。

肝血管腫も大きくなると、上腹部や右側の肋骨の下辺りに痛みや不快感、肝臓の辺りにしこりが触れるなどが現れます。

検査・診断

どちらの疾患も、診断には腹部超音波検査が有用です。肝血管腫では体位や時間によって異なって映る「カメレオンサイン」がみられます。肝嚢胞、肝血管腫のいずれも、通常は血液検査などで肝機能の低下が指摘されることはありません。

肝膿瘍、胆管拡張症、嚢胞性腺がん、肝臓がんなどとの鑑別のために、血液検査、造影CT検査、MRI検査、胆管造影検査などが行われます。肝嚢胞では、必要であれば嚢胞を穿刺して内容物を精査する検査を行います。

治療

いずれも症状がなければ、経過観察を行います。肝嚢胞や肝血管腫が大きい場合や、周囲の組織を圧迫して症状がある場合、まれに感染や出血を伴う場合、出血のリスクが高い場合には、以下のような治療を考慮します。


●肝嚢胞

超音波下で嚢胞に穿刺してドレナージ(嚢胞内の液体を排出する)を行います。注射器で抜き取るだけの場合もあれば、からだの外に設置した袋に時間をかけて排出させる場合もあります。排出された液体は、悪性の可能性や、寄生虫の有無などを精査します。再発のリスクが高い場合は、ドレナージの後で嚢胞にエタノールなどを注入して固める硬化療法や、手術(嚢胞壁剥離切除、部分肝切除、嚢胞の開窓術)などが行われます。開窓術ではドレナージの後、嚢胞の袋を取り除きます。手術の多くは、腹腔鏡下で行われます。


●肝血管腫

手術で切除します。開腹手術と腹腔鏡下手術があり、肝血管腫の大きさ、位置、全身状態を考慮して術式が決められます。

セルフケア

療養中

単純性肝嚢胞および肝血管腫は、良性の病気で悪性化することもなく、肝機能の低下を招くこともありません。

しかし、なかには大きくなるものもあり、とくに肝嚢胞では10cmを超えるほどに巨大化するものもあります。健康診断などで単純性肝嚢胞や肝血管腫を指摘されたら、消化器内科や肝胆膵内科を受診して確定診断を受け、年に1~2回は経過観察をつづけましょう。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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