脂肪肝

しぼうかん

概要

肝臓に中性脂肪がたくさんたまり、腫れてしまった状態が脂肪肝です。アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝に分類されます。さらに非アルコール性脂肪肝には、進行しにくいNAFLと進行が懸念される非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)があります。

無症状のことが多い脂肪肝ですが、NASHはそのまま放置すると肝硬変や肝臓がんを発症するリスクが高いといわれています。

原因

脂肪肝の原因は一般に食べすぎ、飲みすぎ、運動不足、肥満などですが、なかにはこうした原因がなくても脂肪肝になる人がいます。

例えば極端なダイエットや偏った食事をつづけると、肝臓に中性脂肪がたまりやすくなってしまいます。ほかにも遺伝性代謝疾患や薬剤、妊娠などによって脂肪肝になることがあります。

●アルコール性脂肪肝の場合

過剰飲酒がおもな原因です。毎日3合の日本酒を5年以上飲みつづけると肝障害が起こるといわれています。女性は1日40g程度の飲酒でも肝障害を発症する場合があります。

●非アルコール性脂肪性肝炎(NASH）の場合

もっとも多い原因は肥満です。高血圧や高血糖糖尿病、脂質異常などによっても発症する可能性があります。

症状

初期段階では自覚症状はありません。健康診断などで指摘されて、初めて気づくことも多いようです。

症状が進み肝機能が低下すると、全身の倦怠感、食欲不振、腹部の張り、疲れやすさ、などを感じるようになります。また黄疸、浮腫、腹水などが現れることもあります。

このような症状は肝硬変の初期症状と重なります。肝硬変を起こした肝臓は、硬く小さくなり、元のようなやわらかい肝臓には戻りません。重症化は命にもかかわります。そうならないためにも、脂肪肝が疑われたら放置せず、すぐに医療機関を受診して治療を開始してください。

脂肪肝

検査・診断

健康診断で行う血液検査で異常がわかるケースが多いようです。具体的には、血液検査のAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP(ガンマGTP/γ-GT）の数値から肝機能の異常を知ることができます。脂肪肝が見つかったら、飲酒習慣の有無、飲酒の量などを確認して、アルコール性の脂肪肝か、それとも非アルコール性の脂肪肝かを判断します。

肝臓の状態を調べるために超音波検査やCT検査などの画像検査を行い、中性脂肪はどのくらい蓄積されているのか、肝細胞の線維化はどの程度進んでいるのかなどを調べます。

非アルコール性の脂肪肝の場合、進行性のNASHなのかどうかを識別するためには、肝臓の細胞を採取して観察する肝生検を行います。ほかにも肝臓の病気などが疑われる場合にも肝生検を行うことがあります。

治療

脂肪肝は発症原因によって治療方法の詳細は異なりますが、まず食事療法と運動療法によって生活の改善を図ります。肥満がおもな原因ですが、肥満以外の生活習慣病がある場合には、その病気に対する治療を行います。

●アルコール性脂肪肝の場合

アルコールの摂取量を減らしましょう。禁酒が最善ですが、無理な場合は、1日の酒量を決め、週に2日は休肝日を設けるようにします。

●非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の場合

肥満やメタボリックシンドロームが原因の場合は、運動療法と食事の摂取量を調整することで減量を図ります。肥満の程度によっては、食事の摂取を抑えられるように胃を切除する手術や栄養の吸収を抑えるバイパス手術を行うことがあります。

セルフケア

病後

食習慣や生活習慣を見直し、規則正しい生活を送ることを心がけてください。食事の内容や量、飲酒量などについては、栄養士の指導を受け、これまでの生活スタイルを改善することが必要です。

肝硬変に移行してしまうと肝機能は元には戻りません。脂肪肝の段階なら肝臓を健康な状態に戻すことができますので、定期的に受診し、肝機能の検査を続けましょう。

予防

脂肪肝を防ぐためには、適正体重を守り、肥満にならないようにすることが大切です。日頃からバランスのよい食事と適度な運動を心がけ、規則正しい生活を送りましょう。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれます。肝臓に何らかの異常が生じても初期の段階では自覚症状が現れず、気がついたときには重症化していたという状態になりかねません。早期発見、早期治療のためにも健康診断を定期的に受けるようにしましょう。