良性肝腫瘍りょうせいかんしゅよう
最終編集日:2023/3/24
概要
肝臓には多くの良性腫瘍が発生しますが、無症状で、健康診断などで偶然発見されるものがほとんどです。腫瘍があまり大きくない、症状がない状態がつづく、肝機能検査で異常が認められない、悪性化のリスクが低いなどの場合には、積極的な治療の必要はありません。しかし悪性腫瘍との鑑別や、経過中に悪性化するリスクの判断などが重要になります。
なかにはまれなものもありますが、肝血管腫、肝細胞腺腫、胆管のう胞腺腫、肝血管筋脂肪腫、腺腫様過形成、限局性結節過形成、肝炎症性偽腫瘍について説明します。
原因
肝細胞腺腫、限局性結節過形成は経口避妊薬との関連が明らかになっています。
肝血管腫は遺伝的な要因、肝炎症性偽腫瘍は細菌やウイルスによる肝炎や自己免疫の関与が考えられていますが、そのほかの良性腫瘍は原因が明らかになっていません。
症状
多くが無症状です。腫瘍が大きくなると、腹痛、腹部の張り、腹部に腫瘤を触れるなどの症状が現れることがあります。
検査・診断
超音波検査、造影超音波検査、ダイナミック造影CT、MRIなどの画像検査で、腫瘍の種類、大きさ、場所、形、単発/多発、周辺の血管の状態などを精査します。あわせて血液検査で肝機能検査などを行います。
悪性腫瘍(肝細胞がんなど)との鑑別、悪性化リスクの程度を診断することが重要で、肝生検や腫瘍マーカーの値をチェックすることもあります。
治療
良性肝腫瘍の多くは、定期的な経過観察が行われます。積極的な治療を考えるのは、悪性化の可能性がある、腫瘍が大きい・増大する、症状が強い、腫瘍周辺の血管の変化があるなどの場合です。治療の中心は外科的切除で、最近は腹腔鏡下切除術が適応となるケースも多くなり、患者の負担は少なくなっています。
たとえ無症状であっても、健康診断などで腫瘍の存在を指摘されたら、くわしい検査を受けて種類を特定し、経過観察、あるいは適切な治療を受けるようにしましょう。
●肝血管腫
肝臓内の血管が拡張した腫瘍で、肝臓の良性腫瘍のなかでもっとも頻度の高い病気です。女性に多いとされています。多くは単発で無症状、年に1回程度の画像検査での経過観察を行います。腹痛などの症状を伴う場合や、経過観察中に腫瘍に増大がみられるもの、肝細胞がんとの鑑別がつかないもの、血管内凝固異常を伴うものなどは切除を考慮します。
●肝細胞腺腫
20~40代に好発し、とくに30~40代の経口避妊薬を内服している女性に多いとされています。そのほか、糖尿病で多発することもあります。腫瘍が小さい間は無症状ですが、ある程度大きくなってくると、腹痛、腹部の張り、腹部のしこりなどが現れます。腫瘍が出血や破裂を起こすと強い腹痛が起こってショック状態となり、手術が必要になることもあります。悪性化するケースもあるため、腫瘍が大きい、症状が強いなどの場合には、エタノール注入療法や切除が考慮されます。
●胆管のう胞腺腫
30代以降の女性に好発します。胆管嚢胞腺がんとの鑑別がむずかしく、また悪性化する可能性があるため、切除がすすめられます。
●肝血管筋脂肪腫
脂肪、血管、平滑筋という3つの成分から構成される、まれな腫瘍です。中年女性に好発するといわれます。通常は単発で、平滑筋細胞が多いタイプでは、悪性病変が含まれている可能性が高いとされています。
腫瘍が小さければ経過観察を行いますが、大きいもの、増大するもの、悪性化のリスクのあるものに関しては、切除がすすめられます。
●腺腫様過形成
肝細胞がんの類似病変(前がん状態)とされます。経過観察を行い、腫瘍が大きくなったり、周辺の血管に変化がみられたりしたら肝細胞がんに準じた治療を行います。
●限局性結節過形成
肝臓の組織の一部が結節状に増殖したもので、肝硬変のない肝臓に発生します。肝細胞がんとの鑑別が必要ですが、がんを否定できれば治療は必要ありません。
●肝炎症性偽腫瘍
肉芽腫組織からなる腫瘍です。悪性腫瘍が否定できない場合、膿瘍(のうよう)を伴う場合、腫瘍が増大する場合などは切除がすすめられます。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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