劇症肝炎
げきしょうかんえん

最終編集日:2022/4/4

概要

肝臓の機能が炎症によって急速に失われる病気です。急性肝炎を発症すると短期間で急激に悪化し、肝細胞が大量に壊れてしまい肝臓の働きが失われた状態になります。さらに悪化し肝不全の状態となり、劇症肝炎を発症します。肝臓の細胞は増殖力、修復力が高いものの、劇症肝炎は急性肝炎のなかでもとくに重症であるため肝機能を回復することがむずかしく、肝移植が必要となるケースもあります。

劇症肝炎の特徴的な症状に肝性脳症と呼ばれるものがあり、これを発症すると意識障害を起こし最悪の場合は死に至るケースもあります。


原因

劇症肝炎の原因は、ウイルス性、薬物性、自己免疫性肝炎によるものに分類されていますが、原因不明の例も多くみられます。

日本ではウイルス性によるものが多く、もっとも多い原因がB型肝炎ウイルスです。B型肝炎にはさらに感染してすぐに発症する急性期タイプと、感染後体内に潜伏して、突然発症するキャリアタイプがあります。

薬物が原因となるケースでは、大量に摂取して起こる中毒性と、薬に対するアレルギーによって起こるアレルギー性に分類されます。

自己免疫性肝炎については、膠原病などと同様に自己免疫の機序により肝細胞障害が生じるといわれています。



症状

初期症状は、全身の倦怠感、吐き気、嘔吐、食欲不振などです。発熱する場合もあります。肝臓の機能が低下すると白目が黄色くなる、尿の色が紅茶のような濃い茶色になり、白い便が出るなどの黄疸の症状が現れます。浮腫、腹水、血圧低下、出血などの症状が出るようになり、さらに肝機能が低下すると劇症肝炎の特徴的な症状である肝性脳症の症状がみられるようになります。

肝性脳症は、肝機能が低下したことで代謝不全に陥り、肝臓で解毒されて排出されるはずのアンモニアなどの有毒物質が体内にたまり、やがて脳に回ってしまうという症状です。肝性脳症を発症すると、名前を呼んでも気づかずぼんやりしていたり、急に興奮して暴れ出したりします。さらに重症化すると意識障害が起きて昏睡状態に陥り、最悪の場合は命を落とすこともあります。


検査・診断

劇症肝炎には、厳密な診断基準が設けられています。

最初の症状が現れてから、8週間以内に肝性脳症が出現し、肝臓の機能低下に伴う意識障害のレベルがⅡ度以上であることです。

意識障害のレベルがⅡ度以上になると、手のふるえなどの症状が現れます。そして、血液検査によって血液を固めるプロトロンビンが、正常の40%以下になっていないかどうかを検査します。この検査は、患者さんの血液を採取して血が固まる時間を測り、標準的な凝固時間と比較するものです。時間が長くかかればそれだけ肝機能が低下しているということになります。

これらの基準がそろうと劇症肝炎と診断されます。また、劇症肝炎になると肝細胞が大量に破壊されるため、その結果、肝臓が小さくなることがあります。これを肝萎縮と呼びますが、この状態の有無を超音波検査やCT検査などの画像検査で確認する場合があります。劇症肝炎の重症度合いを見極める判断基準のひとつです。


治療

劇症肝炎では、原因に対する治療と、肝臓を守るための治療を並行して行います。具体的には、B型肝炎ウイルスが原因の場合には、インターフェロンなどの抗ウイルス薬を投与します。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が引き金になっている場合には、大量のステロイド剤を使用する場合もあります。

劇症肝炎は早期治療が重要です。できるだけ早く炎症を抑えるために、原因にかかわらず、まずはステロイド剤を投与して経過を観察します。さらに症状が進んだ場合には、血漿交換や血液透析を行う人工肝補助療法を行い、機能低下した肝臓の働きを補う補充療法を行います。

この治療では、血液中の有害物質を取り除くことができます。この治療で肝細胞が増え、肝機能が改善すれば回復に向かいますが、この方法でも回復しない場合は肝移植が検討されます。


セルフケア

療養中

肝炎ウイルスの感染者は、ふだんから健康状態に気を配るようにしてください。劇症肝炎は生命にかかわる病気です。いつもと違うだるさや食欲不振など異常を感じたらなるべく早く医療機関を受診し、重症化するのを防ぎましょう。

予防

劇症肝炎の発症を避けるには肝炎ウイルスに感染しないことが大切です。とくにB型肝炎ウイルス感染からの発症率が高いという調査結果があります。

B型肝炎ウイルスは性交渉で感染するため、不特定多数の相手との性交渉はやめましょう。また、免疫力が低下していると発症しやすくなるともいわれています。生活リズムを整え、疲れをためない健康的な生活を心がけましょう。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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