肝硬変かんこうへん
最終編集日:2022/8/16
概要
肝硬変は、肝臓全体が線維化し、硬く小さくなってしまう病気です。慢性肝炎の状態が長くつづくと肝臓の組織が線維化して徐々に硬くなります。本来、肝細胞は再生力が高いものの、肝硬変になってしまうと元の状態には戻りません。おもな原因はB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎、過剰飲酒、肥満などです。
肝機能が低下すると全身に合併症が起こりやすくなり、最終的には肝不全や肝臓がんを発症するリスクが高くなります。
原因
肝硬変は慢性肝炎が進行して発症する病気です。慢性肝炎のなかでもC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスが原因のケースが多いとされています。
アルコールの過剰摂取や薬物アレルギーによって起きる肝障害、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎などの病気から肝硬変に進行することもあります。
近年増えているのがアルコールの摂取量は多くないのに肝障害を起こす非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)です。NASH発症のおもな原因は肥満、脂質異常症で、閉経後の女性に多くみられます。
症状
肝硬変を発症しても、初期段階では自覚症状はあまり現れません。症状が出ない理由は、一部の肝細胞が炎症を起こし機能不全に陥っても、それ以外の肝細胞が機能しているため軽度ですむからです。
現れる症状は、全身の倦怠感、食欲不振、体重の減少などです。肝硬変が進行し肝機能がさらに低下すると、腹水、黄疸、鼻や歯肉(歯ぐき)などの出血(出血傾向)のほか、手のひらのまん中から外側が赤くなり(手掌紅斑)、首や胸、背中にクモが足を広げたように赤い発疹(クモ状血管腫)が出ます。
重症化すると肝性脳症を発症し意識障害を起こしたり、肝臓のなかで血液循環が悪くなり胃静脈瘤や食道静脈瘤ができたり、それが破裂して大量出血を起こしたりすることもあります。
検査・診断
問診でアルコール摂取量などを含む生活習慣、輸血の経験の有無、家族や親戚にウイルス性肝炎の既往歴をもった人がいるかなどについて確認します。
そして血液検査で肝臓の機能や肝炎ウイルス感染の有無を確認します。血小板の減少や、肝線維化マーカーの上昇、アンモニアの血中濃度の上昇などについてもチェックします。
肝硬変が疑われる場合には、腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行い、肝臓の大きさや炎症の度合い、腹水の有無などについてくわしく観察します。肝臓から組織を採取して顕微鏡で調べる肝生検も必要に応じて行います。しかし、血小板減少や凝固機能が低下して出血傾向がある場合には、出血の危険があるため肝生検は行いません。
これらの検査の結果から合併症の有無、重症度などを把握し、診断が行われ治療方針を決めていきます。
肝硬変と診断された場合には、上部消化管内視鏡検査を定期的に行い、静脈瘤の有無を調べることが必要になります。
治療
肝硬変そのものを治療することはできません。肝硬変の原因となった疾患の治療や、肝不全などの合併症の治療、肝がんの発生を防ぐための治療を行います。
B型肝炎ウイルスの場合は抗ウイルス薬、C型肝炎ウイルスでは抗ウイルス薬に加えて、インターフェロンを使用することもあります。
アルコール性の場合は断酒が、非アルコール性の場合は肥満や糖尿病、脂肪肝などを改善することが重要になります。そのため食事指導や生活習慣の見直しなどについての指導を行います。
腹水がみられる場合には利尿剤を使うなど、症状に合わせた治療も行います。こうした治療でも症状の改善がみられない場合には、肝移植が検討されます。
セルフケア
療養中
アルコール性、または非アルコール性の肝障害が原因で発症した肝硬変は、生活習慣を見直すことで状態が改善することがあります。アルコール性の場合は禁酒が、非アルコール性の場合は栄養士の指導を受け、食生活を見直すことが求められます。必要なエネルギー量を把握し、脂肪分を控えたバランスのとれた食事をしましょう。間食もケーキなどの甘いものは避けて、果物なども適量をとりましょう。
予防
定期的な健診などで肝機能の状態をチェックしましょう。血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP:ガンマGTP)の数値から肝機能の異常を知ることができます。異常が見つかったら、できるだけ早く医療機関で精密検査を受けてください。アルコールの過剰摂取が原因の場合もありますので、日頃から適量を心がけましょう。最近は非アルコール性脂肪性肝炎が原因の肝硬変が増えています。このおもな原因は肥満です。脂肪分を控えたバランスのよい食事をとり、適度な運動をすることが大切です。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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