ウイルス性肝炎にかかった人の家の食器で感染する可能性は?
ウイルス性肝炎にかかっている方の家で食事を作ったとき、洗ってある皿を使って味見をしましたが、そこからウイルス性肝炎に感染する可能性はありますか?
女性/30代
2022/01/28
ご相談者は肝炎ウイルスの感染を心配されているのですね。一口にウイルス性肝炎といっても、その原因となるウイルスは複数あります。主な肝炎ウイルスはA、B、C、D、E型の5つですが、感染経路はウイルスの種類によって異なります。大きくは、水や食べ物を介するものと、血液や分泌液を介するものとに分かれます。
A、E型は前者になりますが、どちらも国内で発症することはまれです。衛生環境が整っていない途上国に滞在中、生水や非加熱性の食品を口にしたことで発症するケースがほとんどです。
B、C、D型は後者で、血液や分泌液を介して感染します。肝炎ウイルスが含まれている血液を傷のある手で触る、注射針の共有や輸血、肝炎ウイルスの感染者と同じ器材でピアスや刺青を入れた場合などがおもな感染経路です。ただ、D型は特殊で、B型に感染した状態にある人にのみ感染が見られ、国内ではまれなタイプです。
B型では上記の経路のほか、ウイルスに感染している人との性交渉にも注意が必要です。感染を予防するため、夫婦間では、結婚前に感染していない相手にあらかじめワクチンを接種してもらうことが推奨されます。C型も性交渉で感染する可能性はありますが、ごくまれです。なお、B型の親子間での感染(母子感染)は、過去に多く見られたものの、現在では妊娠時にB型肝炎の検査を行い、出産に合わせて予防的な治療をするので、ほとんどありません。
さて、以上をふまえてご相談内容をみますと、ご相談者が感染する可能性はほぼないことがわかります。
A、E型は食べ物を介して感染しますが、文面には「洗ってある皿」とあって、国内でもあり、非衛生な環境にあったとも思われませんので、感染の心配はないといえるでしょう。
B、C、D型の感染が成立するには、血液が体内に入り込む必要があり、健康な皮膚表面に付着するだけでは感染しません。ご相談内容には食事のときのことのみ触れていますが、ほかにウイルス性肝炎の方と歯ブラシ、カミソリなど血液が付いている可能性のあるものを共用している 、あるいは何らかの理由で血液に直接触れた、などがなければ感染はありえません。
ウイルス性の病気というと、すぐに感染するのではと誤解されがちです。しかし、どの肝炎ウイルスであっても、日常で接するなかで、例えば握手をする、隣に座る、同じ食器を使用する、同じ鍋をつつく、一緒に入浴する、などの行為では感染しません。
ご相談者には安心していただくことを願うと同時に、ぜひお願いしたいのは、ウイルス性肝炎について誤解されている方に正しい知識を伝えていただくことです。感染を防ぐために必要な対策を講じることはもちろん大切ですが、誤解や偏見に悩まされている患者さんもいることを知っていただければ幸いです。
回答者
保健同人フロンティアメディカルチーム
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