慢性肝炎
まんせいかんえん

最終編集日:2022/4/4

概要

何らかの原因で肝臓が炎症を起こし、肝細胞が破壊されることによって発症します。肝炎による肝機能異常が6カ月以上つづく状態が慢性肝炎です。

慢性肝炎の原因のほとんどはウイルスで、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスによるものです。症状に気づきにくいのが特徴で、多くは軽症ですが、なかには長期間にわたる炎症によって肝臓が傷つき、肝硬変や肝臓がんに進行することがあります。


原因

慢性肝炎の多くはC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスによって発症するとされていますが、特定の薬剤、アルコールの過剰摂取や肥満などが原因となるケースもあります。


慢性肝炎のおもな原因には以下のようなものがあります。

●C型肝炎ウイルス

慢性肝炎の原因の70%以上を占めます。急性C型肝炎の60~80%が慢性化します。

●B型肝炎ウイルス

B型肝炎の持続感染者のうち約10~15%の人が慢性肝炎を発症するとされています。持続感染の多くは母子感染といわれています。成人の感染経路は感染者との注射針の共用や性交渉などです。

●脂肪肝

肥満や飲酒、糖尿病などにより肝臓に中性脂肪が蓄積して起こります。アルコールによらない非アルコール性脂肪性肝炎が原因となることもあります。

●アルコール性肝障害

長期間にわたる大量飲酒により肝細胞が障害を起こすことが原因です。進行すると肝硬変になる可能性もあります。

●自己免疫性肝炎

女性に多くみられるもので、からだの中のリンパ球や抗体が自身の肝臓の組織を攻撃することで起こります。

●薬剤性肝障害

特定の薬(イソニアジド、メチルドパ、ニトロフラントインなど)を長期にわたって服用すると慢性肝炎をひきおこすことがあります。

症状

慢性肝炎の症状はほとんどなく、後から倦怠感や食欲不振などに気づくことが多いようです。皮膚のかゆみもありますが、この段階で感染に気づくことはむずかしいと思われます。黄疸が出現すると、結膜や皮膚が黄色くなり、尿は紅茶色で褐色尿となり、便は白っぽい白色便になります。

感染に気づくためは、“家族に肝臓病患者がいるかどうか”がポイントとなります。慢性化しやすいC型肝炎、B型肝炎は母子感染によるものが多いため、家族に肝臓病の人がいる場合には、血液検査を受けるようにしましょう。それにより肝機能障害の有無がわかります。

また、黄疸などの症状が現れて気づいた場合には慢性肝炎が重症化し、肝硬変を起こしていることが少なくありません。肝硬変が進行すると浮腫(むくみ)や腹水、黄疸などの症状が現れます。


検査・診断

無症状のことが多いため、健康診断などで行われる血液検査のうち、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP:ガンマGTP)の数値から肝機能の異常を知るケースがほとんどです。

肝機能に異常がみつかったら、月に1回、定期的に血液検査(肝機能検査)を受ける必要があります。ウイルスマーカーが陽性で、6カ月以上にわたってAST(GOT)、ALT(GPT)の数値が基準値以上の値を示していた場合、慢性肝炎が疑われます。

肝機能検査では、肝酵素など肝臓でつくられる物質の濃度を測定し、診断を確定します。肝炎の原因の特定や重症度のチェックなども行います。そのほかに超音波検査やCT検査、MRI検査、肝臓から組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査(肝生検)なども必要に応じて行います。


治療

原因にあわせた治療を行います。腹水などの合併症がある場合には、その管理も大切です。

肝硬変に進む可能性がある場合は、状況にあわせた治療が行われます。また、病気が進み、重症化した結果、重度の肝不全の症状がみられる場合には、肝移植についても検討されます。

●B型肝炎、C型肝炎

インターフェロンなどの抗ウイルス剤、ステロイド剤を使用するケースが一般的です。

B型肝炎では、インターフェロンと核酸アナログが用いられます。C型肝炎では、インターフェロンフリー治療が主流となっており、複数の抗ウイルス薬を組み合わせて服用します。

●非アルコール性脂肪肝炎

肥満や糖尿病、脂肪肝などの改善に努めます。健康的な食事で体重をコントロールします。

●自己免疫性肝炎

炎症を抑え、症状を和らげる薬(プレドニゾロンなど)を使用します。免疫抑制薬であるアザチオプリンを併用することもあります。

●特定の薬が原因の場合

その薬の使用を中止します。

セルフケア

予防

慢性肝炎の原因のほとんどはC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスです。肝炎ウイルスに感染しないことが予防につながります。

C型肝炎ウイルスは、血液を介して感染します。他人の血液に触れないようにしましょう。

B型肝炎ウイルスは、血液だけでなく性行為を通しても感染します。性行為にはコンドームを使用しましょう。母子感染を防ぐことも大切です。妊娠時には必ず検査を受けしましょう。

また、脂肪肝やアルコール性肝炎にならないための食生活を心がけてください。食べすぎ、飲みすぎに気をつけ、良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルをしっかりとるようにします。週に2日は酒を飲まない休肝日を設けることも必要です。

定期的に肝機能検査、画像検査を含めた健康診断を受けるようにしましょう。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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