卵管炎らんかんえん
最終編集日:2022/3/15
概要
卵管炎は、腟から病原体が入り込み、子宮頸管から卵管に感染して炎症が起こる疾患です。性行為による感染が多い一方で、流産や人工妊娠中絶、出産などがきっかけで発症する場合もあります。
原因菌はおもにクラミジアや淋菌、大腸菌で、まれに結核菌であることもあります。
卵管に近い卵巣にも炎症が生じて卵巣炎を併発することもあり、両方の疾患をあわせて子宮付属器炎と呼びます。治療を受けずに放置して慢性化すると、卵管が詰まって不妊症の原因となることがあります。卵巣、子宮、骨盤腹膜、膀胱、直腸などとの癒着や腹膜炎、敗血症など、大きな合併症をひき起こす可能性があるため注意が必要です。
原因
卵管炎の原因は、おもに性行為によってクラミジアなどに感染することです。クラミジア感染症は自覚症状が少なく、あっても慢性期に入ると治まるため気づきにくく、病状が進行してしまうことがあります。
性感染症が原因の場合には、女性だけでなくパートナーも一緒に治療をしないと、菌をうつし合うピンポン感染になることがあります。性感染症以外では、流産や人工妊娠中絶、出産、タンポンの外し忘れなどが原因となって細菌に感染するケースや、骨盤腹膜炎や子宮内膜症、子宮外妊娠などが原因で卵管に炎症や癒着が起こるケースがあります。
症状
クラミジア感染症による卵管炎の場合は、初期から慢性期に至るまで自覚症状はほとんどありません。一方、ほかの病原体による卵管炎では、発症後14日以内の急性期には水のようなおりものの増加、激しい下腹部痛や腹部膨満感、悪寒、38℃以上の発熱、不正出血などが起こります。やがて熱は37℃台に下がり腹部の激痛は治まりますが、下腹部が重く感じられ、膨満感や鈍い痛み、腰痛などが残ります。
慢性期に入ると痛みが消えて熱は平熱となり、局所的に軽い腹痛があるだけになります。とはいえ進行すると、卵管にうみがたまり、癒着が起こったり腫瘍ができたりすることがあります。
検査・診断
問診と内診を行った後、超音波検査や血液検査で炎症反応の確認を行います。原因となっている細菌を調べるために、おりものの細菌検査を行うこともあります。
卵管炎を発症しているときは卵巣にも炎症が起きている可能性が高く、子宮付属器炎として両方の炎症を伴うケースが多くなります。
治療
卵管炎は、抗菌薬(抗生物質)を用いてできるだけ早く感染を落ち着かせることが重要となります。症状の変化が大きい場合には、抗菌薬のほか鎮痛剤、解熱剤などの投与も行われます。それでも症状が軽減しない、卵管にうみがたまる、癒着や腫瘍が現れる、などの場合は手術による病巣摘出やうみを取り除く処置が必要になります。
治療を受けずに放っておくと慢性化するリスクがあるため、症状に気づいたら早めに受診し、完治するまで根気よく治療をつづけるようにしましょう。
セルフケア
療養中
激しい下腹部痛や腹部膨満感、悪寒、38℃以上の発熱などの症状が出た場合は、絶対安静を守るようにしましょう。
予防
クラミジアや淋菌による卵管炎の予防は、ほかの性感染症の予防と同じです。不特定多数の相手との性行為を避け、性行為の際はコンドームを毎回正しく使用します。また、少しでも思いあたる症状が現れた場合は、パートナーと一緒に検査を受けてクラミジアに感染していないことを確認しましょう。若い頃の感染が原因で不妊に悩むことがないよう、できる予防をしっかり行いましょう。
監修
Raffles Medical Clinic Hanoi 婦人科
秋野なな
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